第1章 愛して欲しい
両手は柳瀬の両手が絡まって。
座席に身体はぴったり密着。
決して狭くはない車内でも、大の大人に体重かけられて両手捕まれば。
動きはおのずと制限される。
「…………莉央ちゃん口開けて」
「…………」
文句のひとつでもいってやりたくなるけど。
ここで言葉なんて発したらこいつの思う壺。
逆に口を固く閉じた。
「莉央ちゃん」
顔を逸らして頑なに目と口を、閉じれば。
少し空いた間の、あと。
唇を啄んでいた柳瀬の唇は、首筋、耳、までに移動して。
耳や首筋、鎖骨にまで舌が這う。
「っ」
「…………頑固だよね」
ま、いいや。
そう呟かれた瞬間に、左手の拘束が解かれ。
手が。
スカートの中へと侵入する。
「ちょ…………っ、っ!?」
半ば強引すぎる柳瀬の行動に疑問を持つより先に、またしても身体が先に動く。
空いた左手で柳瀬の右手を掴むと同時に、無意識に開いた唇。
狙っていたかのように。
今度は柳瀬の左手親指が、開いた唇の隙間へと入り込む。
「…………」
空いた両手使って柳瀬の左手に思い切り爪を立てても、引っ張っても、柳瀬の親指は口の中から出ていかない。
無言で。
無表情で。
見下ろすだけで。
腹立つ。
「やっぱり女の子だね、莉央ちゃん」
さっきまでのウザいにこにこわんことはうって変わって。
獲物を捕らえた狼みたいな鋭い視線を細めた後。
自分の口に小さな白い錠剤を放り込むと、強引に開けられた閉じられないあたしの口の中へと、それを流し込んだ。
舌の上にある異物を飲み込まないよう必死で耐えてる様を満足そうに見つめたあと。
柳瀬の舌は、あたしの喉奥にまで入り込み、反射的に、喉がなる。
「…………ぷは…っ、今っ、何…………っ」
「莉央ちゃん、キスの時目閉じないタイプ?」
カランカラン、て。
錠剤の入った茶色いケースを軽く振って。
柳瀬の目が、小さく揺れた。