第5章 堕ちる
なんで柳瀬がいんの。
え。
待って。
どっから湧いてきた?
頭ぐるぐるする。
やっぱまだ酔い覚めてないのかも。
なんてどうでもいいこと考えていれば。
「え、わっ!!嘘…………っ!?やな、せッッ」
いきなり柳瀬に肩へと担がれて。
そのままひとの静止も聞かずに向かったのは数分前まで滞在していた自分の部屋。
ドアを開けるなり。
ベッドへと放り投げられた。
「った…………っ、何すん、」
慌てて身体を起こしてすぐに視界に飛び込んできたのは、ドアの内側をガチャンて閉めて。
ネクタイを緩める柳瀬の姿。
あ。
これ。
やばいやつ。
さすがに昨日の今日、というか数時間しか経ってないけど、とにかくこれはやばい。
ベッドから降りてドアへと走ろうと足を伸ばせば。
すぐに柳瀬に捕まった。
ついでに。
両手が後ろ手にネクタイで、巻きつかれて。
「ちょっと待って柳瀬、これ外してっ」
身動き出来ない。
「逃げるからだめ。俺も右手こんなだし。暴れられたら困る」
右手を括っていたアームホルダーを外して。
柳瀬がベッドへと、体重を預けた。
「ちょ…………っと、話し合おうか、柳瀬」
なんでこんな怒ってんの。
昨日あたし記憶抜けてる?
なんかした?
いや、うん、けっこうやらかした感はあるんだけど。
でもなんでこんな怒ってんの。
怖いし。
目がほんと怖い。
「や、あの、柳瀬」
ずりずりとなんとか移動して柳瀬から距離取るけど。
すぐに行き止まり。
わーん。
なんでベッド壁になんかつけたのよあたしのばかぁ。
「ねぇなんで他の男の車なんか乗るの?」
「…………ぇ」
何。
何、言ってんの。
「い、ま、まで、だってそんなの…………。別に珍しいことじゃ、なく、ない?」
え。
それが原因?
悠介の車乗ったから?
それでこんな怒ってんの。
「だってあんたもう俺のじゃん…………っ!!」