第5章 堕ちる
「あーっまじ、犯してぇ」
「…………もちっと包めや、オブラート」
「てか心の声だろそれ、煩悩と一緒に溢れてっから」
「雅さん雅さん、女適当に連れてきます?」
「バーカそこら辺の女になんか勃たねーよ」
「バカはてめぇだ雅。おまえ良く俺の前で言えたなおい。やっぱ殺されてぇの」
「暁さんのそれは莉央ちゃんに対する嫉妬なの。それとも俺?」
「…………」
あ。
やばこれ。
軽く核心ついた感。
「いってぇ!!まじ!!暁さんギブ!ギブマジで痛い!」
「今度言ったらくっつく前に折ってやる」
「…………」
右腕をさすりながら涙目で暁さんの背中へと目を向ければ。
後ろから頭を殴られた。
「あんま調子のんなよ雅。」
「はーい」
莉央ちゃん。
なんだかんだ言ってウチの姫だもんなぁ。
秘めたる思いのひとつやふたつ。
「…………」
だめだ。
思考がネガる。
だいたい同じ屋根の下いんのに指1本触らせてもらえないの。
マジできつい。
薬指の跡ももうほとんど消えちゃったし。
「なぁ雅」
「何すか」
「実際どうなん?付き合ってんのお嬢と」
付き合って…………。
「は、ない」
「みんなの前であんだけかましといて進展なし?」
「や、進展、は、あった」
「ああ、その薬指?」
「…………もう消えちゃったけど」
「あんま暁さんの逆鱗ふれんなよ」
「…………っス」
橘花暁。
莉央ちゃんの、従兄弟。
組の女に手を出して。
いくら莉央ちゃんが庇ってくれたからとはいえ莉央ちゃんに正直なところそこまでの影響力はない。
普通なら殺されるか、良くてどっか売り飛ばされる。
そんな最悪な地獄を抜け出す道は限られてる。
まぁどっちに転んでも地獄なら。
莉央ちゃんと一緒にいられる地獄を選んだって話。
つまり結論からゆーと。
暁さんとは。
『そーゆー関係』、だった。