第4章 自覚
なん。
なんっなんだあれ。
朝からなんなの。
糖尿病なるわ。
あーだめだほんと。
慣れてない。
慣れてないんだよー。
こーゆーの。
柳瀬はやっぱ、慣れてるな。
そりゃね。
きっとあたしの経験人数なんて柳瀬が相手してた1日分の客より少ないんだろうし。
慣れてるよな、そりゃさ。
「…………」
膝を立てたその上に両腕乗っけて疼くまる。
包帯。
そーいえばぐちゃぐちゃだったはずの包帯は、綺麗に新品の包帯で巻き直しされていて。
服も。
綺麗になってる。
柳瀬がやったんだ。
「…………敵いませんて、そりゃ」
モヤモヤした気持ちを閉じ込めて。
ため息を吐き出した。
「…………柳瀬は?」
服を着替えて下へと降りて。
リビングへと顔を出せば。
みんな珍しく揃っていて。
柳瀬と、うちの若頭であるはずの暁のふたりだけが見当たらない。
仕事、とは言ってたけど。
まだ7時前。
こんな早くに何やることあるんだろう。
「最近やけに雅気にしますね。何かありました?」
「いやっ、別になんもない、けど」
「…………?雅には朝一で仕事頼んだのでもう出ましたよ」
「朝一?」
「店の金持ち逃げした店長見つかったんで」
「ああ…………」
やば。
朝から聞きたくなかった。
聞かなきゃ良かった。
朝からわざわざ出向くなんて碌な理由じゃないはずなのに。
なんで聞いちゃうかな。
「…………こ、ころしちゃう、の?」
あたしも聞かなきゃいいのにほんと。
聞いといてめっちゃダメージくらってんじゃん。
「それ、聞きたいです?」
「いや、うん、ごめんなさい」
『仕事』とやらには触れちゃいけないのに。
あー。
朝から凹む。
「お嬢朝飯は?」
「ごめん食欲ない…………」
あんな話聞いたあと食事とか、無理ですごめんなさい。