第4章 自覚
詳しいことは全然わからないけど。
ウチは所謂暴力を生業としてる。
まぁ別に。
それが完全悪だ、とか言うつもりはない。
衣食住に困らない生活が出来てるのも事実なわけで。
ただね。
生々しい想像しちゃうとやっぱ、なんだかな、とかは思うわけです。
そりゃ怖いよね。
子供なんか特にさ。
面倒見てもらってる身でとやかく言えた義理じゃないんですけどね。
まぁ正直柳瀬と顔合わせずらいし。
今日は家でゆっくりしよっかな。
どーせ位置情報とかですぐ居場所バレちゃうし。
また付き纏われても面倒だ。
とか。
思ってたのに。
23時。
何やら外が騒がしくて。
下へと降りればすぐにヤスが、顔を出す。
「お嬢は来ないでください。部屋にいて」
「何、何があった…………」
バタつく家の中窓の外へと不意に目を向けると、雨の中暁がちょうど帰ってきたところで。
なんだ。
暁の帰りでみんなバタバタしてたのか。
なんて軽い気持ちで部屋へと戻ろうとしたところで、視界の隅にうつったものに心臓が跳ねた。
なんか。
見覚え…………。
あ、る。
「…………嘘!!」
「お嬢!!」
今。
今見えたスーツ。
今朝。
見た。
柳瀬が、着てた。
「駄目ですお嬢!」
玄関へと走ろうとしたところでヤスに瞬殺で腕を掴まれ、身体がバランスを崩し倒れ込んだ。
「やだヤス腕離して!!」
暁が抱えてるの。
柳瀬だ。
なんでぐったりしてるの。
なんで。
動かないの。
待ってやだ。
「暁!!」
ヤスがなかなか離してくれない右手は捨てて、窓を開けて思い切り叫ぶと。
こちらに気付いた暁が柳瀬を肩へと担いだまま、こちらへと歩いてきた。
「莉央、こいつの相手っておまえ?」
ドサ、て。
柳瀬を開いた窓から放り投げて。
暁が。
上から威嚇する。
「…………は?」