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メンヘラヤンデレ彼氏からの溺愛調教

第3章 自爆




「…………え 」



後頚部を右手で支え、コキコキ首を鳴らせば。
想像通りとはいかない展開に、素に、戻った。
無意識に。
ほんとに。
不意に。



「知ってる」
「なんで…………」
「7月31日。あたしと一緒」



「ぇ」


今。
なん…………。



「8年前から、知ってる」
「ぇ、いやでも俺たち、話したこと、あった、け?」
「あるよ」




いや待て待て待て。
本気で全然記憶にないんだが!?
頭混乱する。





「ヤクザの孫って、みんなも先生もあたしのこと一歩引いてて。学祭準備で遅くなった時、迎えの車、来ちゃって。先生もみんなも帰っていいって、早く帰れって。でもおまえが、柳瀬が。ひとりだけ特別扱いすんのはちげーだろって、そいつ帰んなら俺も帰る、って。あたしに、ひとりだけ帰んじゃねぇって、今すぐ車返すように、言ったの」
「…………」

「記憶にも残んない些細なことなんだけど、あたしは忘れたことなかった。誕生日が一緒だって知って、嬉しかったから。…………覚えてる」



「…………」



あ。
え。



「いや、ごめん莉央ちゃん俺…………」



「うん。いい。柳瀬が覚えてないからどうとか、そんなじゃないから」



「…………」



思い出せない自分に腹が立つ。
学校なんて。
まして中学なんて。
1番思い出したくもない頃。
学校行事どころか学祭さえ思い出せねーのに。
そんな些細なことなんて。
あー。
くそ。
少しでもいいから思い出せよ。
寂しそうな彼女の顔を喜ばせたい。
本気でそう思った。



「柳瀬」




シナプスの奥の奥底に眠ってるはずの記憶を引き出そうと意識を集中していれば。
隣に座る莉央ちゃんが、ソファを軋ませて。
右手が。
左足に触れた。
身体を起こして莉央ちゃんの左手が、右頬へと。
まわる。


「りお…………っ、」

「しー」




スローモーションみたいに。
莉央ちゃんの行動がゆっくりと、目にうつる。
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