第3章 自爆
たとえば。
初めて自分の身体を売り物にした日。
こんなことで金が貰えんのかって正直思った。
たとえば。
初めて自分が『抱かれる』側になった時。
異物感はめちゃくちゃやばかったけど、特別なんにも感じなかった。
まぁ。
だから。
結論。
誰かを前にこんなに緊張したのははじめてって、話。
「なんも異常なくて良かったね、莉央ちゃん」
「…………あたしはあと一泊くらいあの病室にいたかった」
「そんなに快適だった?」
「おまえがいなかったからね」
「ほーんと莉央ちゃん天邪鬼だよね」
かわいい。
意識してんの、もろわかりなのに。
必死で隠して取り繕って。
「…………何これ」
「退院祝い」
「いや、もらう義理ないし、あんなん入院に入んないでしょ」
「んーじゃ莉央ちゃんが俺のになった記念?いいから受け取ってよ」
「いつおまえのになったのよ!!」
莉央ちゃんの手のひらに小さな箱を置けば。
小さく。
ほんとに小さく莉央ちゃんが、反応する。
あー。
やばいな。
さっき飲んだカフェインが今頃効いてきた。
まじくっそいてぇ。
反応しちゃったことでさらに意識しちゃって真っ赤になってるとことか。
かわいすぎだよ。
莉央ちゃん。
「ねぇ莉央ちゃん、開けてみて」
でもだめ。
まだだよ、莉央ちゃん。
「ピアス」
「うん、俺の誕生石」
「…………柳瀬の?」
「誰も知らない俺の誕生日、莉央ちゃんには知って欲しくて」
ごめんね。
クソほどどーでもいい誕生日だけど。
莉央ちゃんにはきっと効果覿面。
「…………いつ?」
ほら。
食いついた。
莉央ちゃんの足へと右手を置いて。
顔を近付ける。
雰囲気作り、大事でしょ。
「なんて言うと思った?」
「っで!!」
唇まであと数センチ。
莉央ちゃんの手のひらが、よくも悪くも後頚部を折り曲げる。
いってぇ。
首。
首今。
ゴキって。
グギッって。
ぜってぇ折れた。
「おまえの誕生日なら、昔から知ってる」