第3章 自爆
「雅ぃ、お前ちゃんと仕事しろ仕事」
「してますよ」
「いつまでも煙草ふかしてんじゃねーよ、クソガキ」
莉央ちゃんの口の悪さはこの人たちからうつったんだろーな、とか思う。
「なに」
「や、なんでも…………」
いや。
「やっぱ俺このあと抜けていいですか」
「なんで」
「暁さんいれば別にうまく纏まるでしょどうせ」
「珍しいな、雅が暁さんについてなかいの」
「別に」
暁さんといれば暴れても文句言われないし。
発散にちょうどよかっただけで。
「こっちの始末はつけとくんで。このまま直帰したいっス」
「まぁ、俺から言っといてやんよ、暁さんに」
「ざす」
莉央ちゃん、家でおとなしくしてるね。
スマホに表示された印は『ふたつとも』、自宅を示している。
「なん?お嬢の位置情報?やっぱあったか、スマホ以外」
隣に腰下ろして。
先輩である安角(やすみ)さんが咥えたタバコへと火をつけて。
安角さんの視線の先へと目を向けた。
「あの人会長さんの孫娘ですよ、俺が付けた以外にもどうせ監視されてんでしょ」
「…………まぁな」
知ってるくせに俺にわざわざ莉央ちゃん探しに行かせるあたり、組内での莉央ちゃんの立ち位置丸見え。
「スマホ忘れてったわりにすぐ見つけたみてーじゃん。お嬢不審がってなかった?」
「ああ…………、それどころじゃなかったっぽいね」
「おまえバレたらさすがにキレんじゃねーのお嬢」
「大丈夫ですよ」
「…………ほんっと、やべーのに好かれてお嬢も災難だね」
ため息ひとつ。
路地裏に消える兄貴を、見送った。