第2章 情緒
柳瀬はいなくなるつもりできっと、昨日あたしに本性出したんだ。
手を出したら、あたしの前から消えるつもりで。
それが柳瀬のけじめだったんだと思う。
でもちゃんと今。
ちゃんとここにいる。
それだけでいいや、なんて思えるのは思考がきっと追いついてない証拠かもしれないけど。
「…………莉央ちゃん」
「何…………、ィ…っ!?」
被せられた低い声、のあと。
両手が柳瀬に捕まってベッドへと縫い止められた。
激痛が、再度右手を襲う。
やば。
涙出るってそれ。
あんたのネクタイでエグいくらい傷圧迫してんだわ、それ。
「莉央ちゃんに勝手に傷作ったこと俺許してないし、何レイプって。あんた自分で自覚あんならもっと気ぃつけろよ。俺の前で何地雷ってんの。1番聞きたくねーわ、あんたの口から特に」
「柳瀬…………」
「俺たぶんずっとこうだよ」
「え」
「感情の抑え方知んねーし、大事にしたくてもやり方わかんない。莉央ちゃんが欲しいけど、これが『愛』とか『恋』なのかとか正直わかんない。ただあんたは俺のものにしたい、俺だけのものにしたい。それだけなんだわ。」
「うん」
でも柳瀬。
地雷だなんて言うくせにちゃんと自制してんじゃん。
あたしが痛がったから。
力加減、コントロールしてくれてるじゃん。
「いいよ。」
「いいの?怖くない?こんなん側にいて、怖くない?」
「怖くない」
「でもたぶん俺、莉央ちゃんに好きな人とか出来たらそいつ殺すかも」
「出来ないから平気」
「でもいつか、いつかは莉央ちゃん、組のために結婚すんじゃん。俺無理。そんなん、想像しただけで莉央ちゃん殺す」
だいぶやっちゃってんなまじこいつのメンタル。
好き、も付き合っても言わないくせにめっちゃ束縛してくんじゃん。
「もういいよ」
もういい。
「柳瀬、もっと顔近付けて」
「…………」
「もっと」
怪訝に視線を揺らして。
柳瀬の視線があたしを捉えた。
「手、捕まってんだもん仕方ないじゃん。拘束してんのおまえでしょ。いいから早く…………」
キスしたい。
言う前に。
柳瀬の唇が。
荒々しく重なった。