第2章 情緒
ったくどいつもこいつも…………!!
なんっでみんなして無駄に秘密主義なのよ。
結局ヤスからも柳瀬の居場所は教えてもらえないし。
柳瀬は相変わらず捕まらない。
気づけばあたりはどっぷり夜の街だし。
ああもう。
やみくもに探したところで見つからないのはわかってたけど。
夜の街だよ?
真っ暗。
いつもだったらウザいくらいに張り付いてるくせに。
なんっで今日に限って来ないのよ。
しかもなんでこんなにイライラするの、あたし。
公園のベンチでひとり、缶ビールを一気に飲み干しながら。
でっかいため息ひとつ。
星空を見上げた。
「かーのじょ」
「…………」
ほんっとにイライラする。
見上げた星空から目を閉じて。
不機嫌気まわりない顔を、見ず知らずの酔っ払いへと向けた。
「こんなところでやけ酒?」
「寂しいならさ、一緒に飲まない?」
「…………」
本来なら。
馴れ馴れしく右肩へと伸ばされた右腕ごとぼっきり折ってあげてもいんだけど。
「…………いいよ」
最悪、股間でも蹴り上げて逃げりゃいいし。
酔っ払い相手、楽勝でしょ。
楽勝。
本気でそう思ったんだよ。
だってたかだか一般人相手、負けるわけないって。
しかも酔っ払い相手。
負ける要素なんて、見つからなかった。
ただひとつ。
自分もけっこうな酔っ払いだってことを、忘れていただけで。