第10章 監禁
柳瀬が変な嫉妬するの知ってるから。
独占欲丸出しに、不機嫌になるの知ってるから。
わざわざ自分から爆弾投下する必要なんてないって思った。
だけどほんとは気付くべきだったんだ。
『俺に言うことない?』
柳瀬は無意味は問いかけはしない。
確証のある問いかけしかしない。
ほんとはちゃんと、気付くべきだったんだ。
「…………うわ、最悪」
映画を見た帰り道。
突然の通り雨に遭遇して。
仕方ないから近くのカフェで一時的に雨宿り。
祝日の今日、曜日なんて関係ない柳瀬は朝から仕事。
暇つぶしついでに街へと繰り出して。
挙句雨。
そりゃさ。
カフェなんて目の前にあったら寄るでしょ。
するでしょ。
雨宿り。
カランカラン、て。
心地よく耳へと響く音を響かせて中へと入れば。
先日盛大に公衆の面前で告白を受けた、男の子。
…………バイト、かな。
一瞬躊躇はするけど。
ひとの顔見て踵を返すとか失礼だし、入っちゃったもんは引き返せない。
一瞬だけあった視線をすぐに外して。
窓際へと座る。
「橘花さん」
「っ、はい」
「そんな警戒しないでよ。この前はみんなの前でごめん」
「…………ぃや、うん」
「今日はどうしたの?珍しいね」
「あ、…ぇ、と」
慌てて窓の外へと視線を向ければ。
納得したように彼が、笑う。
「急に降ってきたもんね。雨宿りするならさ、橘花さんケーキでも食べてってよ」
「?」
「ここね、俺ん家。たまに手伝ってんの。ケーキ作ったんだ。感想聞かせてよ、来月から店で出すの」
「…………うん」
警戒してたのが憚られるくらいに、他意のない顔で笑うんだな。
って。
こっちまでつられて笑っちゃうくらいに。