第9章 誕生日
「…………そろそろ莉央ちゃん、自分と同じ価値観で生きてない人間もいること認めてよ」
あ。
しまった言い過ぎた。
莉央ちゃんの顔色が、サァっと変わる。
「ごめん違うんだ。莉央ちゃんが心配してくれるのすごく嬉しいよ!!わかった、今度から善処するから。はい、この話おしまい」
「…………シャワー浴びる」
「…………うん」
あからさまにテンション下がったな今。
言い方。
失敗よな、絶対今の。
「柳瀬」
「ん?」
浴室へと続くドアが開かれて。
「シャンプーなかった?」
身体ごと視線をドアへと向ければ。
タオル1枚巻いただけの莉央ちゃんが真っ赤な顔、覗かせて。
「い、一緒、はいる?」
ぶっきらぼうに視線を外した。
「は?」
「…………ごめんなんでもない」
「え、待って待って待って莉央ちゃん行かないで」
す、て。
ドアの向こうへと消える莉央ちゃんを慌てて追いかけて、閉まりかけたドアを両手で静止した。
「何。今の」
「…………」
いや。
タオル。
いや違うそこじゃない。
なんで真っ赤なの、顔。
なんでそんなかわいいの。
「…………柳瀬、喜ぶかと思って」
「——————は?」
いや。
素になるわ。
間抜けな顔なるわそりゃ。
何言ってんだこの子は。
朝っぱらから襲われてーの。
ねぇまじで。
なんなん。
「…………誕生日、ですので」
顔真っ赤にして俯く莉央ちゃんがすごくすごくかわいくて。
頭ぷっつん、する。
「はいる」
「え」
「シャワー、莉央ちゃん洗ってあげんね」
「…………うん」
っだぁああっ!!
無理っっ!!
最高かよ、誕生日。