第8章 幸せ
「…………挿入れてい?」
「…………いい」
もう何度目だろう。
こうやって柳瀬に抱かれるのは。
なのに。
この間は、今だに慣れない。
「莉央ちゃん?」
「あたしが付ける」
「ぇ」
ローション片手に、柳瀬が口に咥えたそれを口に咥えて。
放心状態の柳瀬へとそれを突き出した。
さすがに柳瀬みたいに口でなんて開けらんないから、柳瀬に開けて欲しくて、歯で押さえたそれを柳瀬へと向けた。
「…………どこで覚えたのそれ」
慣れた手付きで口に咥えた袋を器用に切りながら、柳瀬がため息まじりに呟いた言葉。
それを頭上に聞きながら。
中から所謂避妊具、を取り出して柳瀬へと付ける。
「元彼とかにしてたわけじゃないよね?」
…………なわけないじゃん。
こんなことしたいと思ったのもしたのも柳瀬が初めてに決まってる。
ああ上手く出来ない。
口でこんなの被せるとかめちゃくちゃ上級テク、初級も超ド級の初級なあたしが手を出しちゃいけなかったんだ。
「莉央ちゃん」
あたしが手こずっていれば。
「少し吸って口の中入れれる?」
柳瀬の両手が、優しく髪を撫でる。
「そう、上手。そのまま口で根元まで咥えて。うん、ありがとう莉央ちゃん、出来た」
「…………」
結局柳瀬に誘導してもらうんだよな…………。
情けな…………。
でもまぁ、柳瀬が嬉しそうだからいいか。
「どうしたの莉央ちゃん。ほんとお兄さんドキドキしちゃうからあんま煽るのやめて」
「別に口くらい、好きに使ってくれていいよ」
「莉央ちゃんっ」
う、わ。
急に勢い良く身体がベッドに沈むから。
びっくりした。
「…………ふ」
やば。
勝手に顔にやける。
柳瀬の発情しきったその顔。
めちゃくちゃ興奮する。