第8章 幸せ
「ただいまぁ」
「柳瀬」
あれから。
あの日から柳瀬はあの家を出てマンション暮らし。
暁に対して行った暴行はみんなの知るよしとなる…………ことは全然なかったんだけど。
暁が勝手に処理してくれて、マンションも捨てたらしい。(←これに関してはほんとに申し訳ない。潔癖な暁からしたらきっと当然っちゃー当然)
それからあたしはといえば。
「おかえり」
通い妻しつつ、まぁ週末はほぼこっちに入り浸ってる。
「疲れた。ん、いい匂い、何作ってんの?」
キッチンに立つあたしを後ろから抱きしめて、軽くキス。
からの。
つまみ食い。
「ホワイトソース?グラタン?」
「んー、初挑戦なんで期待しないで頂きたい」
「あはは、何それ。莉央ちゃん作るんなら美味しいに決まってんじゃん」
「ハードル上げないでよぉ」
「上げてない上げてない。莉央ちゃんの作るもので、俺が食べれないのなんてあるわけなくない」
…………いい加減離してくんないかな。
これ。
出来るまでくっついてるわけじゃないよね。
息。
耳にあたって、なんか…………。
「…………」
ドキドキが止まんないんですけど。
「…………んぁ!?」
カプ、て。
急に耳たぶが噛まれて。
やば。
変な声出た。
「耳まで真っ赤にしてかわいいんだもん莉央ちゃん。」
「や、やなせ今、これ焦げる、から…………っ」
耳なめないでぇ。
「莉央ちゃんはそっち集中してなよ。手も目も離しちゃだめだよ」
「ちょ…………っ、やなせ!?」
なんのスイッチ入ったのこれ!!
「柳瀬耳、なんか変…………っ、やだ」
「んー」
耳。
音。
響くのやだ。
これ。
反対の耳は柳瀬の指が耳の中を優しく触れるし。
なめられてる耳、あっつい、し。
「やな、せっ」
「莉央ちゃん手、ちゃんと混ぜてないと焦げちゃうんじゃない?」
ならいい加減やめて頂けますか!?