第8章 幸せ
「柳瀬」
「は、はい」
「あたし別に惰性で柳瀬と付き合ってるわけじゃないんだけど」
「え、うん、知ってる…………」
「柳瀬があたしを見つけたんじゃない。あたしが、柳瀬を見つけたの。言ったよね、あたし中学の頃から柳瀬に惹かれてたって。」
タバコへと火をつけて。
着いたついでに吸い込んだ煙で少しむせたけど、それを柳瀬の口へと渡した。
「あたし柳瀬が好きだよ。自信持ってよ。付き合ってくれてるって、そんな悲しいいい方しないでよ。あたし、柳瀬がいなくなる方がいやだ。暴走しても戻ってきてくれればいいから、お願いだから自分責めてあたしの前からいなくなるなんてこと一瞬でも考えないで。いくら暴走してもあたしがちゃんと止めるから、お願い」
「だってそんなの、莉央ちゃんにとって枷にしか」
「いいよ」
タバコを取り上げて火を消して。
唇へと口づける。
「柳瀬が、雅くんが好きだからいいよ。盲目なの」
「莉央ちゃん」
柳瀬の、あたしを呼ぶ声好き。
優しくて。
甘くて。
「…………どーしよう俺今幸せかも」
すごく嬉しそうにしてると、あたしも嬉しくなる。
柳瀬に喜んで欲しい。
笑って欲しい。
ただそれだけなんだ。
「うん。あたしも」
この満たされた気持ちが幸せって言えたなら、きっとあたしたちはこれからも大丈夫。
柳瀬が笑ってくれるなら。
あたしはなんでもどんなことも出来るよ。
柳瀬にはただ、笑っていて欲しい。
あたしの願いはただひとつ。
それだけなんだよ。