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【保科宗四郎】副隊長は思ったより私のことが好きらしい【怪8】

第1章 誰よりも


「へへっ、面と向かって褒められると嬉しいな」
「僕からすると会議中に他の隊の悪口言うとるやつらのが穀潰しやで。防衛隊にそんな暇ありゃしません、てな」
「手厳しいね」
「事実を言うただけですやん?」

 にぱっとおどけたように笑った保科くんはやれやれとでも言うように両手を上げて肩をすくめている。いつもの勝手知ったる雰囲気に私の肩の力も抜け、自然と笑みが溢れた。
 ──のもつかの間。保科くんの次の言葉に私の額にはピキリと青筋が浮かぶこととなったのだけれど。

「まあ僕個人としてはちゃんの解放戦力がこれ以上上がらんくても別に問題あらへんのやけどなあ」
「ハ? 保科の副隊長さまはいきなり解放戦力自慢ですか!?」
「何でやねん、ちゃうわ。……君のことは僕が守ったるってことやんか」
「はあ!? いつまでも守られるのが嫌だから前線で戦えるよう努力してるのに! 私には後方支援がお似合いってこと!? ムカつく!」
「やーかーらー! 何でそうなんねん! ちゃうっちゅーとるやろが!」

 彼の言葉に目くじらを立てた私は縄張り争いしている犬のようにぎゃんぎゃん吠えたてるが、保科くんも負けじと大きな声で反発してくる。解放戦力がここでストップしていいことなんてひとつもないのに。それで他の隊の人からとやかく言われてるのに。
 解放戦力のことを一番気にしている私に対して! 何たる所業! 許すまじ! 食べかけのモンブランじゃ割りに合わないぞ!

「ッあー……今のは僕の言い方が悪かった。すまん」
「何がよ」
「好きな女くらい自分で守りたい。……そう言いたかったんや」
「……空耳?」
「よぉーし。もっ回言うたるで耳の穴かっぽじれや?」
「……空耳じゃなさそう」
「一世一代の告白を空耳で済まされてたまるかボケェ」

 仮にも告白した女の子にボケェて言うだろうか。いや、この男は言うな。一人で自己完結した私は保科くんが言った言葉を頭の中でもう一度反芻する。……私のこと、好きな女って言った。その事実を実感したのか心臓がうるさいくらい早鐘を打ち始め、その音がうるさすぎて耳のすぐそばで鳴っているような錯覚さえ起こしている。
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