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【保科宗四郎】副隊長は思ったより私のことが好きらしい【怪8】

第1章 誰よりも


 いつものようにからかわれているのかと思ったが、熱のこもった真剣な眼差しにそんな考えは早々に打ち消した。こういうときはどんな顔していればいいんだろうか。検索サイト開いたら結論出てくるかな、なんてお門違いなことを考えて現実逃避をしてしまうくらい私にとって衝撃的すぎる出来事だ。何なら初めて怪獣討伐に赴いたときより緊張している気がする。

「ほんで?」
「ほんで? とは?」
「告白の返事以外何があんねん」
「……」
「目ぇ逸らすな」
「うぐ」
「なあ──ちゃん、僕のこと好きやろ?」

 私は今、致死量の保科宗四郎を浴びてしまった気がする。え、私吐血とかしてない? 心肺停止になってない? まさかの名前呼びを華麗にスルーできるはずもなく、素直に高鳴る胸をぎゅっと握りしめれば私の心のように隊服はぐちゃぐちゃになった。
 にっこりと、まるで答えはもうわかっていますとでも言いたげな保科くんは私が返事するのをおとなしく待っている──はずもなく、少し骨ばった男らしい人差し指で私の顎をついっと上に向けた彼は片目をうっすらと開いた。自信に満ち溢れたその表情はムカつくほどかっこよくて様になっていて、やっぱりムカつく。
 このままだと私の死因のところに保科宗四郎って書かれるわ。

「言うたやろ? 僕、誰よりもちゃんのこと見とるしわかっとんねん」
「んなっ!」
「ほら、はよ宗四郎くんだぁい好き言うて? な?」
「……き」
「聞こえん」
「……すき」

 茹でダコも逃げ出すんじゃないかくらい真っ赤な顔で絞り出すように紡いだ二文字はとてもか細くて……また聞こえないって言われたらどうしよう、と思いながら保科くんの顔を見やる。目が合えば優しく微笑んでくれた彼を見て聞こえていたんだ、と胸を撫で下ろした私を嘲笑うかのように──。

「誰が誰を好きか言うてくれんとわかりませんなあ」

 なんて意地悪く言われた。
 恥ずかしいのとムカつくのと恥ずかしいのと。保科くんの手のひらの上で踊らされているどころかコロコロと玩具のように転がされている気がしてならない私は眉毛を吊り上げて無言の抗議を試みるが、可愛らしくこてんと小首を傾げた彼によって一蹴されてしまう。非常にあざとい。そして私より可愛いだなんてあんまりだ。
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