【保科宗四郎】副隊長は思ったより私のことが好きらしい【怪8】
第5章 ♡心も体も恋に堕ちて
情けなく嗚咽混じりの涙声で話す私の右手を包み込むように優しく握りしめてくれた宗四郎くんは、私を安心させかのように何度も何度も頭を撫でて髪をすいてくれる。その優しさに胸が締め付けられ、我慢していた涙が押し出されるようにポロポロと頬を伝っていく。
泣いたら宗四郎くんが困っちゃう。そう思っても勝手に出てくる涙を止めることはできなくて。頭の中で“処女はめんどくさいらしい”と言うフレーズが過ってより涙が溢れてしまった。
流れる涙を追うように舌を這わせた彼は私が泣き止むまでの間……傷口を舐める犬のように、何度も何度も私の頬を舐め上げた。
「なあ。まだ半分しか入っとらんし、やっぱ止め──」
全部を言われる前に左手で宗四郎くんの口を塞ぐ。優しすぎる彼が言いそうなことなんて……ひとつしかない。
視線も合わせずふるふると首を横に降る。それは嫌なんだと。今日、最後までしなければ──彼は当分、私をベッドに誘うことはしない。自惚れていると言われるかもしれないけれど、それくらい宗四郎くんは私の気持ちと体を優先してしてくれるから。
「キスしてほしい。キスしながら全部……入れて?」
「……」
「宗四郎くんとだから最後までしたいの。ね、私のワガママきいて? お願い」
「……わかった」
わかったって言ったけど、その表情は全然納得していなさそう。ごめんね、と心の中で謝ってから薄く唇を開けると戸惑いながらも唇を重ねてくれた彼はやっぱりとても優しいな。この優しさは私だけが知っていたい、なんて私のワガママもお願いしたらきいてくれるかな。なんて。
彼を独り占めしたいなんて、いつからこんなに貪欲になったんだろう。隣に並んでいられるよう強くありたいと、そう思って同じ部隊で訓練に励むだけで頑張れていたあの頃が随分と懐かしい。
「ちゃん……」
キスの合間に名前を呼んでくれる瞬間がこんなにも嬉しいものだなんて知らなかった。
「っは……そうしろくんッ」
抱きしめ合う度に鼻を掠める宗四郎くんの優しくて清潔な香りにこんなにも胸がときめくことも知らなかった。
「んう、んんっ」
もっと欲しい、もっとあげたい、と宗四郎くんのことだけを考える時間がこんなにも幸せだなんて知らなかった。
全部全部──あなたが私に教えてくれた。