【保科宗四郎】副隊長は思ったより私のことが好きらしい【怪8】
第5章 ♡心も体も恋に堕ちて
呆けていた私の手を取った宗四郎くんはそのまま私をソファに座らせ、自分は私の足の間に座って「髪の毛乾かして」と、おねだり。破壊力の高すぎるお願いに私の口から変な呻き声が出てしまったが、合法的に宗四郎くんの髪の毛をわしゃわしゃ触ることができる。という魅力に勝てるはずもなく、柔かなバスタオルを手にとって優しく優しく髪の毛を拭いてあげる。顔が見えないのがもったいなく感じるな。
「はー。気持ちええ。ちゃん上手やなあ」
「これに上手とかあるの?」
「あるある。頭撫でられて喜ぶ猫の気持ち、なんかわかるわあ」
「宗四郎くん、いつから猫になったの」
「ついさっき」
「調子いいんだから」
いつもの調子で話しかけてくれる宗四郎くんに、私の言動も普段通りになりつつある。緊張しているの、察してくれたのかな。相変わらず察知能力が高かすぎる。
これ以上はタオルドライでは乾かないかな。完璧にとは言えないが、ある程度水分の無くなった髪を触って感触を確かめる。ドライヤーをかけたときのふんわり感とは違い、ほんのり湿った感じのする彼の髪は光の加減で艶やかな黒をきらめかせ、烏の羽のように美しい。
思わず無心で宗四郎くんの髪をすいていると、おもむろに彼の顔が近づいてき……柔かな感触が唇を掠めた。
「おおきにな」
「……うん」
「キスで赤ぁなって、今から大丈夫か?」
「自覚はしてるから言わないで!」
「……にしても」
私の頭のてっぺんから爪先まで、ゆっくりと眺めるように視線を動かした宗四郎くん。何度か視線を往復させると満足したのか、片手で顔を覆って大きく深いため息を吐き出した。え、何? なんか私、変?
「風呂上がりの彼シャツ反則やろ……」
彼が呟いた通り、私は今宗四郎くんのTシャツを借りている。私の太ももくらいまであるだぼっとしたTシャツと紐でウエストを調整できるハーフパンツを借りて過ごしていた。
顔を覆ったはずの手の隙間から私をチラチラと覗いている宗四郎くんにちょっと呆れながらも「そんなこと言ったって」とアヒルのように唇を突き出した私は文句を言うために口を開く。