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【保科宗四郎】副隊長は思ったより私のことが好きらしい【怪8】

第5章 ♡心も体も恋に堕ちて


「宗四郎くんが私に渡したんじゃん」
「そうなんやけど。そうなんやけど! 僕のモノ感あってたまらんわあ」
「……スケベ」
「下心しかないわ」

 それもそうだろう。彼の言葉が本当なのであれば“ご褒美に私の初めてを貰うつもりで家に上げた”ということになるのだから。ああ……それにしても私の据え膳感がスゴい。よくよく考えなくても、恋人の家で恋人の服を着て風呂上がりなんてこんなの「どうぞ私をお食べ」と言っているようなもんだ。そうするように手引きして据え膳に上げてきたのは目の前の恋人なのだが。
 私のおでこに優しく唇を寄せた宗四郎くんは「幻滅した?」と問いかけながら、おでこ、眉間、まぶた、鼻先……私の至るところにキスの雨を降らせている。私の髪を一束掬って、そこにも可愛らしい音を立てながら口付けた彼は悪戯に私を見上げていた。どう見ても恋人に幻滅されたかも、と思っている人の顔じゃない。なんなら「こんな僕のことも好きやろ」と言わんばかりである。どこから湧き出るんだその自信は。

「はあ、かぁいい」
「……」
「素っぴんもかわええ」
「……」
「なあ、こんなに僕を虜にしてどないする気?」
「っ、ちょっとストップ! もう恥ずかし──ッン」

 彼の口から際限なく紡がれ続ける言葉に私の羞恥心が耐えられなくなった頃、制止の言葉を発するために口を開いたのが運の尽き。
 おもむろに口の中へと侵入してきたソレが何なのかを理解するよりも早く、反射的に口を閉じてしまった。「あいた」と呟きながら眉間にシワを寄せた──文字通り目の前にいる宗四郎くんの舌が血で赤く滲んでるのを見て、彼の舌を私が噛んでしまったんだ、という事実に遅れて気付く。

「あ、ご、ごめん! 血が……」
「ええてええて。我慢できんくてがっついた僕が悪いんやし」
「でも……」
「びっくりさしてしもたな、すまんすまん」

 ポンポンと頭を撫でてくれる宗四郎くんにいたたまれない気持ちになってくる。こんなときですら私のことばかりを気にかけてくれるなんて優しすぎるでしょ。私の中で大きくなるこの気持ちを表す言葉が見つからなくて、何だかもどかしい気持ちになる。
 優しく私の頬を撫でている手を掴んで、スーハーと大きく深呼吸。私の準備が整うまで律儀に待ってくれる彼は、やっぱり底抜けに優しいと思う。
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