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【保科宗四郎】副隊長は思ったより私のことが好きらしい【怪8】

第5章 ♡心も体も恋に堕ちて


「ベッドの上でわからせたるわな」

 気のせいじゃなかった。
 きゃぴ! とでも効果音がつきそつなほど軽快にポーズを決めた彼は名案だとでも言いたげだ。もし本当に名案だと思っているのなら、一度いい病院を紹介したい。
 いくらゆっくり食べていようと終わりは来るもので……最後に出された玉露を飲み干し、今度はエスコートされるように助手席へと誘導された。お支払いしてもらって、車の扉まで開けてもらって、もしかしてこれが俗に言うスパダリとか言うやつじゃないだろうか。
 運転する宗四郎くんの横顔を盗み見て、いやスパダリは「ベッドの上でわからせたる」とか言う台詞はきっと言わないな。と脳内で自己完結。……それにしてもソワソワする。

「さっきから期待した顔で僕の顔見すぎな」
「……」
「え、だんまり?」
「黙秘します。あと、期待はしてません」
「えー僕はめっちゃ期待してんのに」
「……そんなに期待しないで」

 宗四郎くんがこれまでお付き合いしてきた人たちとは違うだろうから。そんな言葉を飲み込んで窓の外に視線を向ける。一瞬だけ窓越しに彼と視線がぶつかった気がした。
 少しして宗四郎くんが「そうやなあ」と言葉を零したのが聞こえ、食事のときとは違うドキリが心臓を襲う。素っ気なくしすぎて、呆れられちゃったかも。ひやりと冷たいものが背中に纏わりついてくるが、彼の方を見てどんな表情をしているか確認する度胸はない。
 ……呆れられたような顔してたら絶対泣いちゃう。なんてめんどくさい女なんだ、私は。

「期待はちょっとにしといて、楽しみいっぱいにしとくわ」
「……え?」
「僕が勝手に楽しみにしとる分には、ええやろ?」

 そう言って困ったように笑う宗四郎くんに、今度は違う意味で心臓が脈打つ。今日の私の心臓は大忙しだ。素直になれなくて「……勝手にしたら」と半ば投げやりに言ったのに返ってきたのは嬉しそうな笑い声。その笑い声が聞けただけで、私の胸は温かくなった。
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