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【保科宗四郎】副隊長は思ったより私のことが好きらしい【怪8】

第5章 ♡心も体も恋に堕ちて


 眉間にシワを寄せた私を見てもただただ楽しそうにするだけの宗四郎くんは、私の空っぽになった果実酒を見て梅酒のオーダーをしてくれている。何で私が次は梅酒にしようと思ったのわかったんだ、エスパーか。

「ご褒美は美味しくいただきたいやん?」
「ご褒美ってこのご飯のこと?」
「ちゃう」
「お酒……は運転してくれてたからノンアルしか飲んでないよね?」
「残念ながらハズレや。今度は一緒に飲もな」
「う、うん。……あと食べれるご褒美って何? もうないよ?」

 牛肉のたたきに手を付けながら参りました
、とアピールするようにしょんもりと眉毛が八の字になっていく。未だうんうん唸って答えを考えていると、不意に「ちゃん」と名前を呼ばれたので「何?」と返事をする。あまりにも答えが分からなさすぎる私が滑稽だったのだろうか。だとしたらヒントくらいは出してほしい。
 そう思っていたのに宗四郎くんはふるふると首を横に振って「ちゃうちゃう」と否定する。なんかそんな言葉遊びあったなあ、ちゃうちゃうちゃう、ちゃうちゃうちゃうんちゃう、みたいな。待ち望んでいた梅酒を口に運び、そんなどうでもいい事を考えている私の耳に飛び込んできたのは──。

「僕へのご褒美はちゃん、君の初めて貰うつもりやで」

 とんでもない爆弾だった。
 思いきり咳き込んだ私はゲホゴホとこの場に似つかわしくない音を上げながら、頭の中を整理しようと足りない脳を働かせる。できるかどうかは別として。危うく鼻から梅酒出るところだったんだけど……。
 ねえ、この人今なんて言った? 私の聞き間違い? 聞き間違いだよね? 誰かそうだと言って。ここには私と宗四郎くんしかいないけれど、返事をしてくれるならばもうこの際怪獣でもいい。……いや、よくはないか。
 大げさなほど深呼吸をしてから控えめに手を上げて「あの……」と言う私に「なんや?」といつも通りの彼。うん、なんでそんなに落ち着いているのかな?
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