【保科宗四郎】副隊長は思ったより私のことが好きらしい【怪8】
第4章 タダより高いものはない
「わかったわかった! 連れてったるから騒ぐな」
「よ! 副隊長太っ腹!」
「るっさいボケ。太い腹はお前やカフカ!」
「ぐっ!」
「うう!」
「何でセンパイまでダメージ受けてんすか」
「ダイエットハ明日カラスル……」
「それ絶対しないやつですね」
「市川くんうるさい!」
体重まだ戻ってないんだから! と心の中で滝のような涙を流して言い訳をする。どう見たって市川くんはダイエットとは無縁そうな体つきだ。私の気持ちなんてわかるはずがない!
とにもかくにも。高級焼き肉を奢ってもらえることになったのには違いない。こうなったら今日はやけ食いだ! お腹一杯になるまで食べてやる!
「宗四郎くんのお財布を私たちで空にするぞおー!」
「いや、どんなけ食べる気でおるん。大人の嗜みどこいった」
「お財布空は小隊長命令なんで」
「職権濫用も甚だしいな!? 僕も副隊長命令使おか!?」
「そんなのパワハラよ!」
「どの口が言うとんのや!」
「ふふん、この口でーす──ッん」
ああ言えばこう言う。そんな私たちのやり取りは宗四郎くんが私の口を塞ぐという暴挙に出たため、呆気なく終了した。すぐさま離れた口元を押さえながら、わなわなと震える私を見て満足そうに微笑んだ彼は涼しい顔で「職権は乱用しやんけど、彼氏の特権は乱用させてもらうわ」とのたまった。
みんなが見てる前でこんな……! 隊員たちからの生暖かい視線が背中に突き刺さってい気がする。キッと目の前の彼を睨み付けるも悪びれる様子もなく、ニコニコと笑顔のまま。これまた腹が立つ案件だ。
「そんな真っ赤な顔で睨まれても怖ないで」
「うるさい!」
「そんなことよりちゃん、覚悟しといてな」
「何をよ」
「ちゃんへのご褒美やったのに、おまけがようけくっついてきたで。その分の利子は返してもらわんと」
「え! ちょ、聞いてない!」
「今言うた」
「そんなあ!」
「何貰うか考えとくわ」
「宗四郎くんのが私より高給取りなのにぃ……」
私の財布どころか貯金まで空にされそうな事案に胃がキリキリと悲鳴を上げ出した。──とか言いつつ、焼き肉はたらふく頂きましたけど! ねッ!
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