【保科宗四郎】副隊長は思ったより私のことが好きらしい【怪8】
第4章 タダより高いものはない
私の視線に気づいたらしい宗四郎くんは、にぱっと愛嬌のある笑みを浮かべながら両手をぱんと合わせ「これにて合同演習終了やな」その場を締め括った。
「ちゃんからご褒美もらわんと、ごほーび!」
「えー。私も頑張ったのに宗四郎くんだけご褒美制なの?」
「確かにそれは割りに合わんか。何か欲しいもんでもあるん?」
「欲しいものって言うよりお願いがあるんだけど」
「ちゃんからのお願いなら何でも聞いたるで。カフカでもやるか?」
「え!? 何で俺!?」
「一人だけやられた罰や」
「そんな物騒なお願いはしないから!」
私のことなんだと思ってるのよ! もう!
そんな私のことなど露知らず「何やつまらんなあ」とかほざくのはどこのキノコ頭だ。さっき隊員との関係性が大事って自分でも言ってたでしょうに。
反抗の意思を示すために右手で宗四郎くんの頬を引っ張れば「いひゃいわぼけ」と舌足らずな口調で息を吐くように悪口を言われた。けど舌足らずだからあんまり怖くなし、何ならちょっと可愛いまである。
「お肉食べたい」
「焼き肉? すき焼き?」
「焼き肉。高級なやつ」
「ええで、このあと行こか」
「言ったね。言質取ったよ」
「ん? まあ言うたけど」
「小隊集合ー! 今から保科副隊長の奢りで高級焼き肉でーす!」
「は!? ちょお待て、二人きりちゃうんか!」
「誰も二人きりとは言ってないでしょ」
「二人きりやないとも言うとらん!」
「あんなにはしゃいでるヒヨコちゃんたち見捨てるの?」
うおおお! と雄叫びのような歓喜の声をあげているヒヨコちゃんたちは「高級」「焼き肉」「奢り」の三拍子に舞い上がっているのだろう。伊春くんの「副隊長ゴチになります!」と微塵も疑っていない曇りなき眼が宗四郎くんを映し出している。
純粋な伊春くんに圧倒されて「うっ……」ってなってる宗四郎くん可愛すぎる。物珍しいから写真に納めておきたいけれど残念ながらスマホはロッカーに置いてきてしまった。演習中に壊れるといけないからね。残念無念。
何だかんだ優しい彼は大きなため息を吐いたあと、両手を上げて降参のポーズをとった。