【保科宗四郎】副隊長は思ったより私のことが好きらしい【怪8】
第4章 タダより高いものはない
「いやあ、さすがでしたなあ。僕もええ勉強になりましたわ」
我らが副隊長だった。
「解放戦力のこと言うてただけあって、うちのもんとは比べもんにならんくらいの火力でした」
「保科副隊長にそう言っていただけると光栄です」
「司令塔としてはうちののが優れとったみたいやけどなー」
ぴこっと可愛らしく人差し指を掲げながら放った言葉に可愛らしさはなく、宗四郎くんと向き合ってい小隊長の顔がどんどんひきつっていくのが見てとれる。本当にこの人は……何がなんでも敵に回したくないなあ。
「小隊長に選ばれる理由は解放戦力だけやない。普段の訓練の様子や隊員との関係性、いろんなもんひっくるめた上での選任や。この人にならついていきたい、命を預けられる、そんな人にこそ任せたいと思わへんか?」
「……そう、ですね」
ギロリと殺意高めな眼差しで睨み付けられてしまったけれど、言ったのは私じゃないからね。ぜーーーんぶ宗四郎くんだからね? 調子乗りやがってこの野郎みたいな目で私を見ないでいただけますかね!?
この世は何て理不尽なんだ! なんて心の中で暴言を吐いていると、誰かにふわりと肩を抱かれた感覚で我に返る。その誰かとはもちろん宗四郎くんなのだけれど……涼しい顔した誰かさんと違って汗をかきまくったので、できればもう少し離れてほしいと思うのは私のワガママだろうか。
そんな私の気持ちなんて微塵も知らない宗四郎くんにぐいっ抱き寄せられ、汗臭いと思われませんように! と心の中で祈る他ない。
「この子、僕の推しなんで。あんまちょっかいかけんとってもらえます?」
「ちょっかいだなんて……」
「僕、同担拒否なんで」
「……はい?」
「しかも僕、強火担なんで。今度もしちゃん困らせたらなんて──言わんでもわかるやろ?」
すぅっと静かに見開いた彼の双眼は獲物を見据える獰猛な肉食動物のよう。こんなのに睨まれたらみんな泣いちゃうよ。現に、宗四郎くんと向かい合っている小隊長さんの顔が少しばかり情けないものになっている。
っていうか私が推しだったなんて初耳だ。しかも同担拒否らしい。どう考えてもやる気だ。殺伐の殺の方のやる気だ。