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【保科宗四郎】副隊長は思ったより私のことが好きらしい【怪8】

第4章 タダより高いものはない


 今度は左のサイホルスターから違う銃を取り出して敵隊員に狙いを定める。先ほどより一人増えたから宗四郎くんが逃げたと言っていた人が合流したのだろう。まあ、合流しようが関係ないけどね! 勝つのは私たち!
 引き金を引くと、いつもと違う発砲音が辺りに鳴り響く。私が狙った隊員は弾道を読んで華麗に回避した──つもりだったようだ。

「そうは問屋が下ろしません、ってね」
「なっ! ワイヤーが……!」

 ワイヤーガン、ワイヤー銃、拘束銃。色々な呼び名があるけれど、要は火薬が爆発する威力を利用してワイヤーを飛ばす銃のことだ。本当は有刺鉄線みたいにトゲトゲにしたかったんだけれど、開発班の人に「対人に有刺鉄線はダメです!」と大いに諭され、ただのワイヤーとなったのはここだけの話。
 ワイヤーが絡み付いて動けなくなった対象を討ち取るのはいたって簡単で──カフカさんと伊春くんが一発ずつペイント弾を撃ち込んで二人目の討伐が完了。と、同時にカフカさんが敵に撃たれ「あ"あ! やっちまった!」というクソデカボイスと共に戦線を離脱した。最後まで賑やかだなあ。
「次はお前だ、!」
「私のこと好きすぎじゃない?」
「ふざけるな!」
「嫌よ嫌よも好きのうちって言うしね」
「ッ! この……!」
「にしても──私にばかりかまけてて大丈夫てすか?」

 敵小隊長が放ったペイント弾が私の左太ももに当たり、わずかな痛みと共にべったりとピンク色の着色料が着いた。あと一発でお仕舞いだけれど、あと一発もある。
 短く息を吐いて敵と距離を取るように後ろへ下がりながら、牽制するための弾丸を放つ。あともう少し……あともう少しで……。

「目標、射程距離圏内に入りました」
「ヘタ打つなや市川」
「了」

 低くて鈍い音が何回か響いた次の瞬間、敵小隊長の戦闘用スーツに色濃く派手やかなピンクが被弾。終了を示す小此木ちゃんの声がイヤモニから流れて「ほう」と思わず、安堵の息が自然と漏れた。一拍遅れてみんなの歓声が聞こえ、私もその輪に加わろうと振り返ろうとした瞬間──横から突進するように飛び付いてきた人影におもいきりよろめく。
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