【保科宗四郎】副隊長は思ったより私のことが好きらしい【怪8】
第4章 タダより高いものはない
私と宗四郎くんが分かれたら私の方に人が多く来るだろうとは思っていた。悲しいかな、訳あり宗四郎くんと比べたって俄然私の方が弱いからね! 自覚はしていますとも!
だけどそんなことは想定済み。私を討てば終わりだと思っているんだろうけれど、そう簡単にはやられてあげないんだから。両手に銃を握りしめ、フッと短く息をはく。
「さあて、弱いなりの戦い方を見せてあげようじゃないの」
地面を力強く蹴飛ばして二人より前に出る。相手が撃ってきた弾を避け、右手に持っていた小型の銃を発砲するとカッと目が眩むほどの光が辺りを包み込んだ。
今回の演習は私にとって、カフカさんの怪獣知識を元に作ってもらったユニソケット弾の試し撃ちの意味もある。先ほど撃ち込んだ──いわゆる閃光弾と呼ばれるものは、住民の避難時などに怪獣の目眩ましができたらいいなあ、と思って開発してもらったものだ。
……私の予想の五倍くらい発光してて直視したら目が潰れるんじゃないかと思ったのは、きっと私の気のせい。少し遠くから「目が……目がァ……!」と、どこぞの大佐みたいな台詞が聞こえてくるのも、きっと気のせい。だと思いたい。
「後ろは頼んだよ、二人とも」
「いくぞ! オッサン!」
「っしゃ、やってやるぜ!」
私が閃光弾を撃ったと同時に踵を返した二人は後方から来ていた敵を迎え撃つため、ペイント弾を撃ち放つ。後方の敵は少し遠かったが、閃光弾があまりにも光りすぎたため一瞬怯んだようだった。棚ぼたラッキーですね。
その好機を逃さず、ペイント弾を相手に一発当てた伊春くんはさすが八王子討伐高専首席といったところだろうか。カフカさんは撃ったものの避けられてしまったようなので今後の活躍に期待して、私は私のやるべきことをやることにしよう。
「私も後輩に負けてらんないわ」
空のサイホルスターに右手の銃を仕舞いこんで、腰後ろに着けていた違う銃を取り出して両手で構えて撃ち込んでいく。辺りにどこか薬品っぽい不快な臭いが漂い始めると、ああ今戦っているだな、とどこか他人事のように自分のことを感じてしまうのはなぜだろうか。
本当はもっと、バターたっぷりのクロワッサンが焼ける芳醇な匂いとか、お鍋の蓋を開けたときに鼻をくすぐる温かな豚汁の香りとか、そんな幸せな匂いだけ嗅いでいたいのに。……あ、だめだ。そんなこと考えていたらお腹が鳴ったわ。
