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【保科宗四郎】副隊長は思ったより私のことが好きらしい【怪8】

第4章 タダより高いものはない


 気合いを入れるため自分のほっぺをパシリと両手で叩いてから、他の隊員の背中もパシパシと叩く。──宗四郎くんにだけ本気で叩いたのは秘密だ。まあ、一瞬でバレて怒られたけど。

「ヒヨコ共、ちゃんが言うたように勝ちにこだわれ。力を示せ。手ぇ抜いたら──わかっとんな?」
「了ッ!」
「お前らのだぁい好きな小隊長が好き勝手言われんの、これ以上許すな。気合い入れてくで」
「そんなこと言って、小隊長のことだぁい好きなのは保科副隊長じゃないですか!」

 ワハハとカフカさんのヤジが飛ぶもきょとんと不思議そうな顔の宗四郎くん。少ししてから意地悪く笑ったかと思うと、私の肩を優しく抱き寄せて「だぁい好きなだけやない、愛しとる」と言い放って私の頬に唇を寄せてきた。
 ねえ、私の魂、口から出ていっちゃってない? もうね、いろいろと死にそうなの。例えば情緒とか情緒とか情緒とか。フーと長く細い息を吐きながら気持ちを落ち着かせようと試みる。──試みるだけで、うまくいくとは決して限らないけれど。
 ちょっとホントもうマジでその糸目を全力解放して見てみなさいよ、ヒヨコたちの顔を。誰が上官のイチャつく姿を見たいって言うのよ! あの死んだ魚のような目が見えないのかな!
 チッと私が舌打ちしたタイミングで「合同演習開始します」と小此木ちゃんの声が聞こえ、素早くマスクとゴーグルを装着して演習場を駆け出した。すぐさま切り替えた私を誰か褒めてくれ。


▽▲▽


「カフカさん、伊春くん。もうすぐ敵とバッティングするよ、準備いい?」

 演習が始まってすぐに宗四郎くんと市川くんとは分かれ、カフカさんと伊春くんを先頭に逆三角形の形で演習場のど真ん中を突っ切っていた。
 市街地を模した演習場は視界が悪く、建ち並ぶビルが視界の邪魔をしていて死角だらけ。だけどこういう場所の方が常に気を張っていて周囲をよく警戒できていたりもするよ──ねっ!

「前方十一時の方向、距離百メートルに二人! 後方五時の方向、距離百二十メートルに一人!」
「了!」
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