【保科宗四郎】副隊長は思ったより私のことが好きらしい【怪8】
第4章 タダより高いものはない
伊春くんの言葉のどこに衝撃を受けたのかはわからないが、何かに衝撃を受けたらしい宗四郎くんはいつもは閉じている瞳を見開きながらわなわなと震えている。何でだろう、あんまりいい予感がしないのは。そしてそういう予感の方がなぜかよく当たるものなんだよね。
興奮気味に伊春くんの肩を掴んだ宗四郎くんは「古橋」と行動とは裏腹に落ち着きを孕んだ声で彼の名を呼んだ。どもりながらも返事をする伊春くんの蛇に睨まれた蛙感がスゴい。
「ちゃんの高専時代の写メとかあったりするん!?」
「ン"ッ!?」
「ありますよ!」
「ア"! 伊春くん!?」
「ホンマか!? 見して! あわよくばくれ!」
「了解っす!」
「ちょ、ちょちょ! 待っ!」
「高専時代のちゃんとか絶対可愛いやろ! 見たすぎるわ!」
「やめ、やめっ……」
私の話をしているはずなのに、私のことなど蚊帳の外。二人で今期最大の盛り上がりを見せる宗四郎くんと伊春くんに「ア……ア……」と、恥ずかしさからどこぞの顔がない真っ黒な生物みたいな声しか出せない。
伊春くんのスマホを覗き混みながら「かぁいい!」とはしゃぎ出した宗四郎くんに目眩を覚える。後ろから市川くんとカフカさんにポンと肩を叩かれ、何とも言えない表情をされたけど何の慰めにもなってないぞ。ホントに。
「なあなあちゃん」
「……何ですか」
「卒アルとかあらへんの? 僕、見たいなあ」
「……ナイ」
「いや、絶対あるやろ! その間は! ええやん減るもんやないし見してぇな」
「私のメンタルがすり減るからだめ」
「ええー」
「だめ」
「ほんならこの演習で頑張ったら他のご褒美ちょうだい、ごほーび」
「何がご褒美よ! 保科副隊長が勝手に混ざってきたんでしょ!」
「ちゃんのことあんなええように言われて黙っとれるかいな! 公式に物理でボッコボコにするチャンスやで!?」
「公式を悪用しないの!」
ムキー! と子どものように怒る私たちを他所に、イヤモニから「合同演習開始五分前です」と小此木ちゃんの声が聞こえてハッと我に帰る。小隊長としての威厳なさすぎる気がするけど、もう今さらだから気にしないことにしよう。