【保科宗四郎】副隊長は思ったより私のことが好きらしい【怪8】
第4章 タダより高いものはない
「カフカさんに伊春くん、お疲れ」
「センパイ! お疲れっす!」
「あれ? 保科副隊長ここで何してんですか?」
「僕もこのファイブマンセルに参加することになったで、よろしゅうな。日比野センパイ」
「え"!」
「マジっすか!」
っしゃあ! と元気に喜ぶ伊春くんとは裏腹にカフカさんは何とも嫌そうな表情をしている。宗四郎くんにバレてトレーニング増やされるから、もうちょっと表情管理がんばった方がカフカさんのためだと思う。また鬼のような訓練メニューになっちゃうよ。
にしても……何て個性豊かな人員構成なんだ。どう考えても私より宗四郎くんの方がこの小隊の小隊長にふさわしいと思うけれど……今回はそうも言っていられない。宗四郎くんはあくまでオマケ、私ががんばらないと。
ふんっ! と気合いを入れ直して今回の合同演習のルールを再確認するため、四人を私の近くへと呼び寄せる。
「今回のファイブマンセルではこのペイント弾を使います。このペイント弾が三回当たった人は戦闘不能扱いだから気を付けてね」
「ウス!」
「んで、相手の小隊長を戦闘不能にした方が勝ち。なんだけど保科副隊長は……まあ、うん、ね? 今回の合同演習においては規格外だからハンデがついています」
「ちょ、そんな訳あり野菜みたいなレッテル貼らんとってくれる?」
「訳ありも訳ありでしょうが! 保科副隊長は部下への指示はしない、銃の支給もなし、要するにペイント弾使えないどころか、模擬刀は一本のみの支給で全力解放はなしでの参加! これのどこが訳ありじゃないと!?」
ぎゃん! と私が勢いよく宗四郎くんに異議を申し立てる姿が珍しいのか、はたまた副隊長という上司に向かって吠える先輩隊員が珍しいのか、市川くんと伊春くんは二人揃って目を見開いて私の方を見てきた。けど私の文句は止まらない。だいたいいつもいつも! と普段から思っていることを口にすると「まあまあ、落ち着き」と宗四郎くんにたしなめられてしまった。私を感情的にさせている原因はあなたですけどね!?
ふん! とそっぽを向いて腕を組み、仁王立ちしながら「とーにーかーく!」と声をかければ後輩隊員三人はピシリと背筋を伸ばしてこちらを向いた。