【保科宗四郎】副隊長は思ったより私のことが好きらしい【怪8】
第4章 タダより高いものはない
名案だとでも言いたげにポンと手を叩いた宗四郎くんに目玉が飛び出しそうになったのは私だけじゃないようで……視界の端で顔をひきつらせている人が一人いるのを発見した。いや、そうだよね。私だって副隊長クラスが急に合同演習に参加するって言われたらそんな顔になるもん。
そんな私たちの気持ちなど露知らず、にっこにこ顔の彼は「ちょうど暇しててん」「演習参加できてラッキーやわ」と参加する気満々で話を進めていた。いやあ……この人味方でよかったと、心底思ったわ。
「ま、待ってください! 保科副隊長のお手をわずらわすわけには──」
「せやけど僕、強いやん? 君らにとってもええ訓練になると思うねん。弱すぎて困ってたんやろ?」
「それはー……」
「それに僕も自分の小隊持ってから誰かの下につくことも少ななったし。初心思い出すええ機会や」
「あのー……」
「いやあ、楽しみやなあ。僕も勉強さしてもらいますわ」
あれ? この人まだ精神攻撃続けてたのかな? 怖ぁ……と思いながら半目で宗四郎くんを見つめる。相手の小隊長さんが不憫に思えてくるぐらいには可哀想だ。話すらまともに聞いてもらえないどころか、話す隙すら与えてもらえないのだから。
ご機嫌そうな宗四郎くんはルンルンで「ほな、またあとで」と言って会議室を後にした。
「──ということがありましてですねー、今回の演習に保科副隊長も参加することになったんだよ」
「いや、私情が凄すぎません!? 小隊長のこと言われて腹立ててますよね!?」
「いややな市川。僕はちょーーーっと提案しただけやで?」
「ちょっとの圧じゃないんですよ! ほぼ強制!」
「あっはっは、いやーみんなハッピーな結末やなー」
「みんなで何騒いでんだ?」
二人分の足音が聞こえてそちらを振り向くと今日のファイブマンセルの残りの二人、日比野カフカさんと──ピンク色のリーゼントと言う目立つ頭の青年、古橋伊春くんが不思議そうな表情をして立っていた。