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【保科宗四郎】副隊長は思ったより私のことが好きらしい【怪8】

第4章 タダより高いものはない


「これ以上無ければ定刻通りに合同演習を開始、と言うことでよろしいですか?」
「だから! さっきの話がまだ終わってな──」
「ミーティング中すまんけど、廊下まででっかい声が丸聞こえやでー。扉半開きになっとる」
「ッ! 保科副隊長!」

 お疲れ様です! とさっきまでの私への態度とは打って変わって礼儀正しくなった相手を見てバレないように小さくため息をつく。今回ばかりは宗四郎くんに助けられたかもしれない。ナイスタイミングで登場してくれたし、何ならこのままこの場を収めてくれないかな。なんて淡い期待を込めてじっと見つめていると、私の視線に気づいてくれた彼はニッと口の端を上げて笑ったあと「ちゃんもお疲れさん」と労ってくれた。
 私も「お疲れ様です」と返事をしながら、机の下で「いけ!」「やれ!」と手を動かして合図をする。虎の威を借る狐? 上等じゃないの! 何だって借りて憂さ晴らししてやるわ!
 私の意図を汲み取ったらしい彼は意味深に頷いたあと「そう言えば」とわざとらしく話をし始めた。

「さっき聞こえたんやけど。このファイブマンセルやと訓練にならへんかも話になっとるん?」
「はっ! 今回組んだチームではあまりに解放戦力が違うため、訓練にならないだろうと進言いたしました」
「ほぉーどれどれ」

 何が進言よ、ただの文句だったじゃない。そんな私の思いが態度に少し出ていたのか、資料を覗きこんできた宗四郎くんに耳元で「もう大丈夫やでな」と小声で言ってもらえて少し肩の力が抜けた気がした。こういうときは本当に頼りになる上官──。

「なはは! ほんまやん、全然解放戦力ちゃうやん! こりゃ勝負にならへんな」

 前言撤回。あとでしめる。
 全力で笑い始めた宗四郎くんにふつふつと殺意が湧いてくる。何が大丈夫よ、大丈夫要素ゼロだったんですけど。手に持っていた資料にぐしゃりとシワが寄るぐらいには、私の手に力が入っている。
 見えてる? 相手の小隊長のあんんんの勝ち誇った顔、その全然開いていない目で見えてるっ!?

「保科副隊長ちょ──」
「せやから僕が藤堂小隊に入るわ」
「え?」
「は?」
「そしたら平均解放戦力もトントンやし、ちょうどええやろ。あ。もちろん手加減はしたるで安心しぃや」
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