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【保科宗四郎】副隊長は思ったより私のことが好きらしい【怪8】

第4章 タダより高いものはない


 昨日も両人差し指をぴこっと顔の横で立てて、可愛らしく決めたポーズとは裏腹に「おかわりいこかー」と訓練がアホほど追加されたことは今思い出しても胃がキリキリしてくるレベルである。ほんっっっとうにキツかった。あれで夜の見回り入ってたら終わってたわ、私。
 そんな昨日の思い出はさておき。可愛い後輩が助けを求めているのだから助けてあげなければ。

「保科副隊長がファイブマンセルに参加することになったのはちょっと理由があって」
「理由、ですか?」
「そう。話すと少し長くなるかもなんだけど──」


▽▲▽


「ということで本日のフォーマンセルは私、が小隊長を務めます。残り四人の人員は資料の通りです」

 北方師団との合同演習を円滑に進めるためのミーティングで配布した資料を基に説明を進めていたが、読めばわかるとでも言いたげな態度の相手に少しばかりイラつくこと約五分。
 これが中之島さんや斑鳩さんだったらもっと真剣に話を聞いてたくせに! 私だからって舐め腐りやがって! と心の中で悪態をつきまくる。こんな態度を取られるのは今に始まったことではないが、だからと言って腹が立たないのかと言われればそれはまた別の話だ。腹は立つ!
 バサッと資料を放り投げるようにして机に置いた他隊の小隊長は「これ、やる気あんの?」とすでに臨戦態勢だ。

「……と、言いますと?」
「解放戦力たった二十八のあんただけでも相手にならないのにこのおじさん、何? 解放戦力一パーセントって舐めてんの?」
「今回の演習はそういった方が成長できるようにと──」
「あんたのところはいいかもしれないけど、こんなんじゃうちは練習にもならないって言ってんの」

 平常心平常心。外行き用の笑顔を顔に張り付けて「お互い、上からの許可は出ています」と業務的な返事をするも、それすら気に入らないのか鋭い目付きでギロリと睨まれてしまった。おー、怖っ。
 最初こそこの雰囲気に飲まれて何もできなかったけれど、月日が立てば人間慣れるし強くなるもの。私だって言われっぱなしじゃないんだから。
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