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【保科宗四郎】副隊長は思ったより私のことが好きらしい【怪8】

第4章 タダより高いものはない


「小隊長」
「どうした市川くんよ」
「今日って他部隊との合同演習ですよね」
「そうだよ。新人も入ったからチームとしての訓練も兼ねてね」
「俺の記憶違いじゃなければ小隊長クラス一人、先輩隊員一人、新人三人のファイブマンセルですよね」
「しっかり話聞いてたね、偉いぞー」

 合同演習まで残り三十分。軽くお昼ごはんを食べてお腹を満たし、ウォーミングアップも順調に進んで体も温まってきたころ、今日の合同演習で私の下につくことになった市川レノくんがやってきた。涼やかな髪色が特徴的な、宗四郎くんとはまた違ったタイプのイケメンでとっても目の保養なんですよねー。
 先ほどまでストレッチをしていた彼は何か聞きたいことでもあるのか、神妙な面持ちで私に話しかけてきた。……あ、もしかして緊張しているのかな? 初めての合同演習だし。私も最初の合同演習はめちゃくちゃ緊張したし、無駄におろおろして当時の小隊長にどやされたなあ。

「じゃあなんで」
「ん?」
「なんで──保科副隊長が小隊に入ってるんですか?」
「あー……ねえ?」

 私の隣で模擬刀の感覚を確かめていた保科副隊長こと、保科宗四郎くんは「ん?」と不思議そうな顔で市川くんを見上げた。ん? じゃないわよ、と思ったけどここはだんまりが吉と踏んだ。
 私は少し前に身をもって学んだの。触らぬ神に祟りなし、口は災いの元、だと。

「なんや市川。僕がファイブマンセル入っとったらあかんのか?」
「いや、ダメとかそういう次元の話じゃないですよね。実力差ありすぎて訓練にならないんじゃ……」
「いいか市川。男には何を差し置いてもやらなあかんときがある。僕にとってはそれが今なんや」

 市川くんの肩をがしりと掴んだかと思えば、カッと目を見開いてかっこよく決めている宗四郎くんに意味がわからないと困惑気味の市川くん。そんな彼は視線だけで私に「どう言うことですか」「ていうか助けてください」と語りかけてきた。今日も第三部隊の隊員は相変わらず傍若無人──じゃなかった、お茶目な副隊長の餌食になっている。
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