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【保科宗四郎】副隊長は思ったより私のことが好きらしい【怪8】

第3章 苦くて甘い人生を


 これ……要は嫉妬してくれている、と捉えてもいいんだよね? いつも飄々とした宗四郎くんからは想像のつかない言葉の数々と拗ねた表情。唇を尖らせて不満げにしている彼を見た私は呆気に取られ、考えることすらも放棄して口をぽかんとだらしなく開けることしかできないでいる。
 もしかして明日の天気って大雨か、季節外れの大雪だったりするのかな? なんて失礼なことを考えながら噛まれたところに視線を落とす。
 ……ああ、だから。

「わざわざ左手薬指を噛んだの? 噛み跡、指輪みたいに見える」
「……我慢ならんかった。僕の彼女やー! ってわからせたかったし、呑気なちゃんにイライラした。まあ完全に八つ当たりやけど」
「ほんとそれな。……って思ったけど宗四郎くん、私のこと好きすぎじゃない?」
「当たり前やん。僕をこんなダメにしてしまうん、ちゃんだけなんやで?」
「くっ……これは顔がいいこと自覚してるタイプのイケメンだ……!」
「僕、何のとこかサッパリわからんわあ」

 上目遣いできゅるきゅるとした眼差しを私に向けるな! でも可愛い! 可愛すぎて、すぐ許してしまいそうになるでしょうが!
 情緒がジェットコースターのように乱高下している私は「あ"あああ」とゾンビみたいな呻き声を発しながら天を仰いでいる。そんな私の口に何かが勢いよく突っ込まれた。驚きつつも、もぐもぐと咀嚼すればサクサクのタルト生地に程よい塩味の卵──うまッ! とあまりの美味しさに思わず目を見開いて宗四郎くんの顔を見れば、にこにこしながら「美味しかったでちゃんにも食べてもらいたて」と一言。
 あーもう無理だ。この人に敵いっこないわ。ズルいズルい、計算された可愛さズルい。

「宗四郎くん、ほんといい性格してるよねー」
「そんな褒めんでも」
「褒めてない」
「なあ」
「うん?」
「今度、指輪贈ってもええやろか」
「……えっ」
「ちゃんの左手薬指に」

 とんとん、と彼の人差し指でつつかれた自分の左手薬指に視線を落とす。ここに……宗四郎くんがくれた指輪をはめる……? 嬉しさと恥ずかしさで言葉に詰まっていると「いくらなんでも性急すぎたな。重すぎてヤバい奴みたいやわ」と変な勘違いをされ、挙げ句の果てには「ごめんな」と謝られる始末。
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