【保科宗四郎】副隊長は思ったより私のことが好きらしい【怪8】
第3章 苦くて甘い人生を
煽りに煽っている宗四郎くんに対し、む! と眉間にシワを寄せたカフカさんはカッチーンとでも効果音が付きそうなほどの怒り顔。目なんか血走っていてちょっと……いや、だいぶ怖い。っていうか宗四郎くん、煽りスキル高すぎるな。才能ありすぎてるよ。
そしてそんな宗四郎くんに──。
「オス! 保科副隊長のライフスタイル、ぎょうさん学ばせてもらいます! そうと決まればまずは副隊長のお部屋から見せてもろていいですかあ?」
「は!? なんやその関西弁! 何でそうなんねん! 来んでええわ、どっか行け!」
変なイントネーションの関西弁で煽り返していくカフカさんの激強メンタルよ。……まあ、私も先日宗四郎くんに変な関西弁だって怒られたんだけどね。ハハハ。
にしてもカフカさんのメンタルの強さ、私に一割くらい分けてくれないかな。そしたら私ちょうどよくなる気がする。
「いえ、勉強させていただきます!」
「マ……マジかこいつ……。あ! ちゃん! 定時になったで仕事終わりや!」
「あ、ほんとだ」
「はよ僕の部屋でご飯一緒に食べよ」
今日は宗四郎くんのお部屋で一緒にご飯を食べるお約束。私が気になっていたカフェのデリカッセンを早番だった宗四郎くんが買いに行ってくれていたのだ。嬉しすぎる。
何買ってきてくれたのかな。キッシュ売ってたかな。オシャレーなサラダも美味しそうだったんだよなあ。あーお腹空いてきた。早く食べたい。
ご飯のことばかりを考えて、きっとだらしない顔をしているであろう私の手をむんずと掴んだ宗四郎くんは大股でトレーニングルームを後にする。躓きつつも一生懸命彼の後ろを着いていく──のは私だけじゃないようで。
「ホンマについてくる気ぃか!?」
私たちの後ろをニコニコとついてくるカフカさんに宗四郎くんは目を見開きながら少し焦った様子だ。正直ちょっとレアだと思う、宗四郎くんがこんな顔しているの。
しっしっと手で払うような仕草をする宗四郎くんと、ゴマをするように手を揉んでいるカフカさん。そこに私が挟まっているという変な構図に、通りすがりの隊員たちが何だ何だと視線を投げかけてくるのが少々恥ずかしい。見世物じゃないですううう……という私の心の叫びが伝わるはずもなく、二人はまだ言い争っていた。