【保科宗四郎】副隊長は思ったより私のことが好きらしい【怪8】
第3章 苦くて甘い人生を
ああ……と情けない声を出しながらカフカさんの心配をする私をよそに、パンパンと私の肩を払う宗四郎くんの眼差しが真剣なこと真剣なこと。そんなにカフカさんのこと邪険しなくてもいいのに。
「ほんっまアイツ腹立つわ!」
「そんな目くじら立てなくてもいいじゃないですか。スキンシップの一環ですよ」
「はあ!? 今の時代あんなんセクハラやセクハラ! 訴えたる!」
「いやいやいや! そこまでじゃないです、大丈夫です! それより私に見てほしいものがあったんじゃないんですか? カフカさんのお腹がなんです?」
「あ。せやったせやった」
思い出したようにポンッと手を叩いた宗四郎くんは高火力で怒っていたときとは打って変わって、朗らかな笑顔でいまだ床とこんにちはしているカフカさんを指差した。と、思ったら一言「腹出過ぎててヤバない?」と笑いを堪えながら言い放った。
腹……と思いながらカフカさんのお腹を見てみる。まあ確かに宗四郎くんと比べたら出ているけれど、三十代ってこんなものだったりするのかな? あーでも防衛隊員って意味ではもう少しスリムになった方がいいのはいい、よね? ……うん。
首を傾げながら「まあ、確かに?」と肯定すると「せやんなあ!」とまた笑い始めた。その笑い声に反応するように「う……」と呻き声を上げたカフカさんがのそりと瞼を上げた。
「大丈夫ですか?」
「大丈夫に見えますか……」
「いや、全然」
「鍛練が足らんのとちゃうか」
「副隊長に殴られたらみんなこうなりますよ!?」
「そうは言うてもなあ。まずはン"ッ、その腹ぶはっ! どうにかせんとなあ! だはは!」
先ほどから笑いのネタにされている、お世辞にも引き締まっているとは言いがたいカフカさんのお腹。インナー姿の二人が並んだらそりゃあ月とスッポンだけれど、そういう私も別に宗四郎くんほど腹筋がバキバキに割れているわけではないので。彼にからかわれているカフカさんには少し同情してしまう。