【保科宗四郎】副隊長は思ったより私のことが好きらしい【怪8】
第3章 苦くて甘い人生を
第三部隊にいたら誰しも聞き馴染みがあるであろう、ぎゃははは! とアホみた──ごほん、大きな笑い声がトレーニングルームに響き渡る。ランニングマシンを走る足は止めずに顔だけで声がした方を向けば、お腹が捩れそうなほど爆笑している宗四郎くんとムキー! と怒り心頭なカフカさんがいた。……まぁたカフカさんのことからかって怒らせたな。
それすらも第三部隊にとっては日常茶飯事。またか、と言う思いで無視を決め込もうと思った矢先に「ちゃーん! 見てえな、これれ!」と流れ弾をもろに喰らってしまった。
私の他に誰かいなかったの!? とトレーニングルームの中を見渡してみるも誰もいなくて……思わず大きなため息が出てしまったのは仕方がないと思う。
「何ですか? 保科副隊長」
「何で副隊長呼びなん?」
「ギリギリまだ仕事中です。あと五分あります」
「お固いなあ。ま、ええわ。それよりこれやこれ!」
じゃーん! とオーバー気味なジェスチャーで見せてくれたのは何故かカフカさんの──腹。え、お腹? 何でお腹?
訳がわからず「はあ……」と適当な返事をしたのが癪だったようで宗四郎くんはむむっと眉毛をつり上げる。そんな顔されてもなあ……と頬を掻いていると今にも泣き出しそうな怒り出しそうなカフカさんが詰めよってきて「副隊長に何とか言ってやってくださいッ!」と、私の肩を掴んで前後に激しく揺さぶり始めてしまった。
ちょ、力加減て知ってる!? 揺れすぎて頭痛いよ! ガクガクと揺れる私から「あばば」と変な声が出てることに気づいて!
「せやからちゃんに触るな言うとるやろがこのタコ! いてこますぞ!」
言葉が出るのが早いか手が出るのが早いか。凄い勢いと早さで殴られたカフカさんは、おおよそ人間から出るとは思わないような呻き声を発しながら宗四郎くんに殴り飛ばされてしまった。毎回カフカさんにだけ当たりが強火すぎない? このままじゃいつか消し炭になっちゃうよ、彼。