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【保科宗四郎】副隊長は思ったより私のことが好きらしい【怪8】

第2章 混ぜるな危険


「ほんで?」
「ほんで? とは」
「何隠してるん?」
「別に何も隠してないよ」
「えぇ? 君、無自覚なん?」
「何がよ」
「言いたくないこととか隠しごとしたいとき、すぐちょける癖あるやろ」
「──は」

 思ってもみない方向からボディブローをくらった気分。からかわれてるのかと思ったけれど……いや、きょとん顔の宗四郎くんを見るにこれはマジなやつなんだと、思わずごくりと唾を飲み込んだ。そんな癖があるなんて知らなかった……って言うか自覚していたら癖じゃない、のか? 無意識にやっちゃうから癖な気もする。
 それにしたって……私のことよく見てるなあ、宗四郎くん。実は物凄く気にかけてくれていた──いや待てよ? ってことはこれまで「あ、こいつ隠し事しとるな」とか思いながらあのにこにこ顔で私に接してたってこと? めっっっちゃ私恥ずかしい奴じゃん。もうやだやっぱ穴に入りたい。

「また百面相なんかして」
「……させられてるんです。誰かに」
「何隠してるか教えてくれたら、そんなことにはならんのちゃいます?」
「っぐ。ぐうの音も出ねえ……」
「出てる出てる、やのうて。またちょけよる」
「……言っても笑わない?」
「笑わん」
「引かない?」
「引かん」

 言うまで逃がさん、とでも言いたげに腕だけじゃなくて足も私の腰に絡めてきた宗四郎くんは綺麗な紅紫色の瞳を覗かせながら私の様子をうかがっている。それに耐え隠れなくて少し視線を逸らすと、それに比例したように私を抱き締める力が少しだけ強くなった。
 まあ……言わないと離してもらえないし。仕方ないか、なんて自分に言い聞かせている私はなんと健気なのか。もうちょっと優しくしてくれてもバチは当たらないと思うな。

「……宗四郎くんは、その、経験あるんだよね?」
「うん? 何の?」
「……セッ、クス」
「ああ。まあ、うん、あるで?」
「……処女はめんどくさいらしいと聞いたことがあるのですが。そこらへんは……どうお考えですか……」

 どんどん尻すぼみになる私の声とは反対にどんどん見開かれていく彼の目は、ありありと驚きを指し示している。わかっている……わかっているよ? こういう質問をするところがもうめんどくさいやつなんだって。だけど気になったんだからしょうがないじゃん、なんて誰に言い訳するでもなく心の中でぶちまける。
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