【保科宗四郎】副隊長は思ったより私のことが好きらしい【怪8】
第2章 混ぜるな危険
映画を見ようとは誘ったけど、先ほどの会話が頭の中の大半を占めていてどうしても悶々と頭にピンク色の景色が浮かんでくる。……カフカさんと宗四郎くんが変な話するから。っていうかあの話の流れから察するに、宗四郎くんは経験あるってことだよね? ……気になる。
「どこまで行くん。部屋ここやろ」
「あ! ごめん、考え事してて」
「ナニ考えてたん?」
「ひっ秘密!」
私の反応を見てン"フと吹き出した宗四郎くんの肩を小突くと大袈裟なほど痛そうな素振りをしている。そんな彼を横目に部屋の鍵を開け中へと促す。「お邪魔しますー」と言いながら部屋へと足を踏み入れた宗四郎くんはキョロキョロと辺りを見渡して「あの頃とあんま変わってへんな」と顔を綻ばせた。
宗四郎くんの言うあの頃とは私たちが第三部隊へ配属されて少しあとのこと。年も近かった私たちはすぐ仲良くなって、非番が被ったときは今回のようにどちらかの部屋で映画を見たりオススメの本を交換することもあった。その頃から物は少し増えたけれど、家具などは変わっていないから。宗四郎くんが懐かしく感じるのも頷ける話だ。
「ワインとか用意するね」
「おおきに」
自分へのご褒美に、と買ったちょっといいワインとチーズにクラッカー、ドライフルーツなどを小皿に出して宗四郎くんの元へと戻る。勝手知ったる我が家のようにくつろいでいる宗四郎くんを見るのはこれで何回目だろうか。
今まで何度かお互いの部屋を行き来したことはある。あるけど……『恋人』という肩書きが加わった今、これまでと同じような気持ちではいられない。自分の部屋なのにどこかそわそわしてしまう私に視線だけ寄越した彼は、悪戯を思いついた子どものような表情で私を見上げた。
「この人をダメにするソファ最高やな」
「抜け出せなくなるよね」
何か仕掛けてきそう。そんな直感を抱き、ちょっと警戒しながらソファででくつろぐ宗四郎くんの隣に腰を下ろす。すると「え」と心底意外そうな声が聞こえてきて何だ何だと彼の方を向いた──のがよくなかったのかもしれない。