【保科宗四郎】副隊長は思ったより私のことが好きらしい【怪8】
第2章 混ぜるな危険
私の目の前で繰り広げられているこれは漫才か何かかな? 息ぴったりすぎるのでこの世から怪獣がいなくなったらコンビ芸人としてデビューして欲しいくらい。……いや、絶対宗四郎くんの端正な顔立ちのせいでミーハー人気凄そうだからデビューは無しの方向にしてもらおう。
私の思考が明後日の方向にいっている間も二人の言い争い、もとい漫才はまだ続いていた。
「はあー嫌や嫌や。これやからええお年のチェリーボーイは。他人の彼女に発情しよってからに、ほんま節操ないわあ」
「だぁれがチェリーボーイだ! 残念ながら経験済みですううう!」
「どうせじょーーーずなオネーサンに筆下ろししてもろただけやろ! だいた……ちゃん?」
話の内容に少しずつ品が無くなってきた頃。宗四郎くんの発した単語に大袈裟なほど肩をびくつかせた私を不審に思ったらしく、私の名前を呼びながら顔色を窺うように覗きこんできた──彼の顔がこちらに向かないよう掴まれていない方の手で全力阻止。反射的に掌底を宗四郎くんの顎に喰らわせてしまい「ごふっ!」と決して彼から聞こえてはならない声が聞こえてしまった気がするけど許して欲しい。……許してくれないよなあ、絶対。
顔を見られたくなくて宗四郎くんから逃げるようにそっぽを向いた先でカフカさんと目が合ってしまったのは想定外の出来事。誰にも見られたくなかった顔を、それはもうバッチリと、見られてしまってボン! と爆発しそうなほど一気に血が上ってきた。
「あ! もしかして小隊長って処じょぉぐほッ」
彼にデリカシーと言うものを誰か教えてあげてください。そう願った時にはすでに遅く、宗四郎くんの長い長いおみ足がカフカさんの横っ面を捉えて派手にぶっ飛ばしていた。
あばば。とカフカさんの心配をしていたが、宗四郎くんの両手によってぐりんと顔の向きを変えられた私は否応なしに宗四郎くんと視線を合わせられる。
すぅ、と細められた紅紫の瞳に見つめられてしまえばどんな人だって背中に冷や汗をかくだろう。ちなみに今、私の背中は汗で滝のようになっている。