【保科宗四郎】副隊長は思ったより私のことが好きらしい【怪8】
第2章 混ぜるな危険
瞳孔をかっ開きながら強火で圧をかけてくる宗四郎くん。そこに油を一斗缶どころかドラム缶で注ぎまくるカフカさんはわざと──なわけないか。失礼だけど、そんな器用な人じゃなさそうだもんね。
ただ壊滅的に空気読めないか馬鹿なのかの、はたまたどっちもなのか。細く長い息を吐きながら、私は両手で顔を覆って天を仰いだ。明日の朝日……拝めるかな、私。
「カフカ」
「は、はい!」
「その子が誰かわかっとんのか」
「え? あ、小隊長です! 保科副隊長!」
「せやな。──僕の彼女や」
「え……え"えぇえぇえ!?」
「るっさいわボケ! 急にデカい声出すな!」
「いや! だって! 保科副隊長と小隊長付き合ってたんすか!?」
「一週間前からやけどな。ええやろ、彼女」
ふふん、と自慢げな宗四郎くんの様子にくううと何故か悔しそうなカフカさんの目は血走っててちょっと怖い。
にしても……私との仲、こんなにもさらりと公言してくれるんだ。隠す必要もおおっぴらに言う必要もないとは思っていたけど、それを彼の方から堂々と言ってくれるのは正直嬉しい。私も関係性を誰に聞かれても胸を張って「私が宗四郎くんの恋人です」って言おう。じゃないと宗四郎くんに失礼だ。
うんうんと一人で納得する私の横へ来た宗四郎くんはおもむろに私の腕を掴んで自分の方へと引っ張った。心の準備も体の準備も出来ていなかった私は「はへ」と言う間抜けな声を上げると同時に、宗四郎くんの胸へとすっぽり収まる。こんな時でも宗四郎くんの筋肉は凄いなーなんて考える私も空気が読めなくて大馬鹿者なのかもしれない。
「そー言うわけやから夜中に二人でおんのもせやけど、ちゃんの手ぇ握るなんて論外や。今すぐ半径五メートル以上離れろ」
「いや、現実的に考えて無理でしょーが! つか小隊長のことちゃんって呼んでんすか!?」
「カフカ。明日外周二十周追加な」
「理! 不! 尽!」