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【保科宗四郎】副隊長は思ったより私のことが好きらしい【怪8】

第2章 混ぜるな危険


「じゃあ……人生ではカフカさんのが先輩だけど、怪獣討伐の先輩としてアドバイスさせてもらうとすると」
「ウス!」
「本当に自分がやりたいと思っているかどうか、だと思います」
「やりたいかどうか……」
「『やりたい』が『やらされている』になった瞬間、人は不平不満を覚えます」
「……もう少しわかりやすく」
「えっと、やりたいって自分発信じゃないですか。自分がやりたくてやっているので。だからその時は壁にぶつかったり挫けたりしても、人って何とかしてみようと努力するし試行錯誤すると思うんです。目標に向かって」

 こんな若輩の話をうんうん真面目に聞いてくれるカフカさんはなんていい人なんだろう。私もつられて居ずまいを正して話を続ける。

「だけどやらされている人って誰かのせいにしたり、見返りを求めがちなんですよ。こんなにやってあげたのにとか、こんなにしているのに評価されないとか」
「……」
「誰かのせいにしているだけじゃ自分の成長には何も繋がらないですよね? だから私はいつも、私がやりたいと思っている防衛隊の仕事をしています」

 急に静かになったカフカさんにつまんない話しちゃったかな? と不安にかられ「カフカさん?」と様子を窺うように小さく声をかけるといきなり私の両手が彼の両手でがっしりと掴まれ、驚きから大きく肩が跳ねた。
 え? え? 急にどうした? 私の話つまらなさすぎてキレた? 時間を無駄にさせやがって的な?
 内心冷や汗をかきまくっていると勢いよく顔を上げたカフカさんの表情に思わず目を見開いた。

「小隊長カッケー!」

 なんて曇りなき眼なんだ。なんだか教祖さまにでもなった気分。

「俺、この年になってやっと夢に向かって走り出すって決めたんすけど解放戦力が……だから俺は俺の持ってる武器で頑張りたいって思ってたとこなんです!」
「カフカさんだけの武器?」
「怪獣の知識だけなら誰にも負けないつもりです」
「確かにそれはカフカさんの武器ですね。戦いにおいて情報は大切ですから──仲間の生死をも左右するくらいに」

 私の言葉にごくりと息を飲む音が聞こえる。それはきっと希望か確信へと変わった音。
 やっぱり私たちは似た者同士かもしれない。カフカさんと話していると私は私のままがいいんだと自信を持って言えるし、もっと頑張ろうって思える。
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