【保科宗四郎】副隊長は思ったより私のことが好きらしい【怪8】
第2章 混ぜるな危険
「遅くまで精が出ますね、カフカさん」
「あっ、小隊長! お疲れさまです!」
「お疲れさまです」
資料室に明かりが灯っていたので中を覗いてみる。たくさんの資料を並べながら机にむかっていたのは保科副隊長こと宗四郎くんが最近よく面倒を見ている日比野カフカさん。
宗四郎くんが「お笑い枠のめっちゃおもろいおっさん入った」って思い出し笑いを堪えられない様子で言っていたのはまだ記憶に新しい。その時は防衛隊員の採用基準どうなってるんだって思ったけど……彼なりに思うところが他にもあるらしく、しっかりと、厳しく、鬼のように、面倒を見ているようだ。
見ているとちょっとだけ可哀想に思えてくるのはここだけの話にしている。これを進言したら私にも火の粉が降りかかってくるのが目に見えているんだもん。
ごめんね、なんて思いながカフカさんに歩み寄って彼の手元にある資料を覗きこむ。ノートにびっちりと羅列された文字は全て怪獣に関する物だった。あまりにも膨大な量の知識に思わずギョッと目を開く。
「全部カフカさんがまとめたんですか?」
「はい! 出来ることがあるなら人一倍頑張りたいんで!」
「……よかったら隣に座っても?」
「えっ!? あ、はい! どうぞ!」
ガタガタと机の上を片付けて私のスペースを開けてくれたカフカさんにお礼を言いながら横の椅子をひいて「お邪魔します」と一声かけてから座る。横からカフカくんがペンを走らせているノートをじっと食い入るように見ていたら「あの……」と控えめに声をかけられて思わず顔を上げる。
言いにくそうに口元をもぞもぞ動かすカフカくんに「もう勤務時間外だし、遠慮せず何でもどうぞ」と伝えれば重たい口がゆっくりと開いていく。
「そんなに見られると恥ずかしいと言いますか……書きづらくて」
「あっ、ごめんなさい。そりゃそうよね」
「いや! こっちこそすんません!」
「気にしないでください。カフカさんって何か私に似てるから……ついつい気になっちゃって」
「俺と小隊長が?」