第4章 目覚め
潮風がカーテンを揺らし部屋に塩の匂いをもたらしている
蘭花は一週間、深い眠りに沈んでいた
手術は成功したが彼女の体はまだ脆く
左肩の傷は痛みを訴え続けているようで寝顔は険しいまま
ハンは妹のベッド脇に座り、彼女の手を握っていた。
普段は口が悪くギャング「烏」のボスとして冷徹な男
しかし、蘭花に対してだけはまるで別の人間のようで
彼女はハンにとってただの妹ではなくもう1人の自分自身だった。
「蘭花…早く目を開けろよ」
ハンの声は感情を押し殺しているかのように小さく低い
手術が終わって一日経ち彼は構成員たちに厳命する
「警官には手を出すな。蘭花が目覚めるまで、誰も動くな」
構成員たちは不満を漏らしたが、ハンの一瞥で黙った。
彼の怒りは構成員以外には向けられなかった
春から夏へと移る晴天の日
ハンは窓の外を見上げた。
青い空と、遠くで鳴る波の音
蘭花がこの海で死にかけたことを思うと胸が締め付けられた