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空白の少女と海の記憶

第4章 目覚め




暗闇の中で、蘭花の意識が揺れた。

彼女の瞳が、かすかに動いた。
記憶がよみがえる
あの夜の銃撃戦。
ハンを守るために飛び出した瞬間に
見てしまった味野の冷たくだがどこか悲しげな目。
全て思い出していた

「お兄ちゃん…」

出しにくい声を振り絞り、
蘭花は小さく息をはくように呼ぶ。
ハンと2人の時にしか使わない幼い頃からの呼び方

ハンは振り返り、妹の目が開いているのに気づいた

「…蘭花」

彼はベッドに近づき腰掛けてそっと目を合わせた。
「痛むか?」

蘭花は声を出さず少しだけ頷いた。

左肩の傷が、生きていることを教えてくれた。
だが、同時に味野の顔が頭から離れない
あの夜の彼の震える手、
涙と怒りに満ちた声
そして彼女を包んだ脆い優しさ…。
心を満たされた日々が蘭花を弱くさせるのもわかっていた。


少しの静寂が流れた後、ハンが口を開いた。

「あの警官を調べた。」

蘭花はその言葉に息を飲む
ハンの声は落ち着いていたがボスとしての冷徹さが滲んでいた。

「俺たちはこの件に関与しない。
蘭花、お前が考え行動しなさい」

蘭花は目を閉じ、少し強く頷いた
ハンの言葉は
兄としての優しさではなく、ボスとしての命令だった。

彼女には自分で決める責任がある。

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