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空白の少女と海の記憶

第16章 決別




「味野を忘れないため。…私が彼を殺したことにして。
自分の枷として…生きていく」

彼女の声は震えなかったが胸の奥で味野の笑顔が焼きついていた

彼の死を自分の罪として背負い、逃げずに生きる
――それが、蘭花が選んだ道だった。

味野への愛、罪悪感、
そして「烏の娘」としての自分を縛るための彼女自身の選択。

ハンは彼女をじっと見つめた
ボスとして、警察の追跡を「烏」から逸らすため、蘭花を指名手配にするのは合理的だった

だが、妹を切り捨てる選択は彼にはなかった
彼女の瞳に宿る決意と痛みを見たハンは
兄として彼女の選択を尊重することを選んだ。

彼は小さく頷く

「…わかった。蘭花、これはお前が選んだ道だ。俺は従う」

ハンの声は低い、ボスとしての命令ではなく兄としての覚悟が滲んでいた。
彼は続けた。

「だが、俺はお前を切り捨てねぇ
指名手配はする、警察を騙し組織を守る。
けど、お前はどこへ行っても、俺の妹だ。」

蘭花の瞳が一瞬揺れた

「ありがとう…お兄ちゃん。」

彼女の声は小さく幼い頃の呼び方がこぼれた
ハンはすぐに動き出した
味野の死を蘭花の仕業に見せ、
彼女を指名手配にする工作を始めた。

警察の追跡を「烏」から逸らし、蘭花を新たな闇に送り出す
――それはボスとしての戦略だったが妹の決意を尊重する兄の選択でもあった。

彼は味野の死を蘭花の仕業に見せ、
警察の目を彼女に集中させる手配を始めた

それは組織を守るための策だったが、
同時に蘭花の決意を形にするための兄としての最大限の支援だった。
彼女を追う警察の目は彼女の枷となり、味野の記憶を刻み続けるだろう。

蘭花は立ち上がり倉庫の闇に背を向けた
彼女の心は感情に蓋をしたまま味野の笑顔を胸に刻み歩き出す

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