第16章 決別
蘭花を覆うように彼女に飛びつき背中に数発の銃弾を受け
衝撃が彼の体を貫き焼けるような痛みが広がり冷たいコンクリートに味野は崩れ落ちた
「味野!」
蘭花の叫び声が倉庫に響く
彼女は縛られた手を無理やりほどき味野の銃を拾い上げた
涙が頬を伝い、
だが彼女の目は鋭かった
「烏の娘」としての冷徹さが一瞬蘇り彼女は最後の男に向け正確に引き金を引いた
男は倒れ静寂が戻り
蘭花は銃を投げ捨て味野に駆け寄った
「味野! 味野、起きて!」
彼女は彼の肩を揺らし血に濡れた背中に手を当てる
彼女の声は震え涙が止まらなかった
味野の顔は青白くだが彼女を見上げ力を振り絞って
「お前は……笑ってる方が、似合う…」
そう伝えた
彼の声は弱々しく途切れ途切れだった
蘭花の涙が彼の頬に落ち彼女は首を振った
「やめて…味野、死なないで! ごめん、私のせいで…!」
彼女の声は嗚咽に変わり過去の罪悪感が胸を締め付けた
味野の手が彼女の頬に触れようとわずかに動いたが思うように動かない
彼の目がゆっくり閉じそのまま息を引き取った
蘭花は彼を抱きしめ声を上げて泣いた、波の音が遠くで響き倉庫の闇が二人を包みこむ