第16章 決別
港のコンテナターミナルは夜の闇に沈んでいた
黒いバンが停まる廃墟のような倉庫の周囲は潮の匂いと静寂に包まれている
味野は遠くに車を停め闇に身を潜めて状況を把握し
様々な方面から警官の勘が鋭く働いていた。
バンの周りにいるのは取引の夜に「烏」と対立した組織の残党
――復讐に燃える三人の男たち。
蘭花は倉庫の奥に連れ去られ意識はあるものの手を縛られ
彼女の月光に照らされた顔は冷静だが瞳には微かな動揺に揺れていた
味野は銃を握る手に力を込めた
腕の傷が疼き彼女を撃ちそうになった夜が頭をよぎる
彼女は敵、「烏の娘」だ。
しかし5日間のささやかな温もり、彼女の笑顔…
――それらが彼を突き動かした。
警官としての義務か、蘭花への愛か。
葛藤を振り切り彼は人数を確認し闇の中から飛び出した
最初の男は、味野の正確な銃撃で倒れた
銃声が倉庫に響き二番目の男が反応する前に味野の弾がその胸を貫く
順調だった。
だが、最後の一人が蘭花の方を向き彼女に銃口を向けた
彼女は縛られた手を振りほどこうともがき仮面のない顔で男を睨みつけた
「お前らを、許さない!」
男が叫び引き金を引こうとした瞬間味野は本能的に動いてしまった