第3章 ……への道
地図の番地は、港の外れにある倉庫街だった
錆びたコンテナが並び、潮の匂いが濃く漂う場所
蘭花は足を止め辺りを見回した
見覚えのない風景なのに、なぜか胸がざわつき
「ここ…何だっけ?」
自然と出た言葉に彼女は頭を振る
記憶の断片が、霧の向こうで揺れる。
銃声
叫び声
誰かの笑い声
だが、それ以上は出てこない
突然、倉庫の扉が軋む音がした。
一人の男が姿を現し
蘭花を目視すると、驚いたように目を丸くし
「…お前、まじか?」
男は慌てて倉庫の中に戻り、扉が再び開く。
次に出てきたのは、数人の男女
そしてその中心に立つ長身の男
黒いスーツをまとい鋭い目をした彼は
蘭花を見つめ静かに口を開いた。
「…蘭花」
蘭花はその声に体が震えた
夢で何度も探した何度も声を求めた人物がここにいる
思い出そうとすると頭に痛みが走る
「貴方は…?」
彼女の口から自然とこぼれた。
彼女の名を呼ぶ男
――ハンは、ギャング「烏」のボスであり、蘭花の兄だった。